日本水産、コロナ禍以降の変化対応強化、水産資源+独自技術で優位性を/金澤建支業務用食品部長インタビュー

日本水産 金澤建支業務用食品部長
――2020年度の振り返りを。特にコロナ禍で業務用市場全体として大変苦戦する中、貴社の業績は悪くなく見えるが
業務用食品部門はニッスイ個別(国内)で売上高は調理冷凍食品が前年比4.4%減393億円、約半数が業務用の農産冷凍食品が4.9%減112億円となった。

厳しい数字と捉えており、各社取組業態なども異なり業界平均と比べどうかは分からないが、業務用市場の中でも比較的好調な業態で伸ばせたのではないかとは思う。

カテゴリー別では水産揚げ物は前年並。ものにより良しあしはあったが、カキフライ、アジフライで量販惣菜部門のパック売りへの変化に対応でき、好調だった。単品では、揚げて盛るだけの天ぷらセット、高付加価値型のごちそうエビフライといった商品が伸長し全体をけん引した。また、従来量販店惣菜向けに展開していたクリームコロッケが水産売場で採用され2ケタ近い伸びとなった。かき揚げ類、オムライス類などは、キャッシュアンドキャリー(C&C)での採用もあり、カテゴリー全体として伸長している。

また、グラタン・ドリア類は「クチーナ・カルダ」ブランドで展開するNB はたいめいけんコラボなどの監修品をはじめ量販店で順調だったが、CVS 向けが業態自体の不振もありマイナスでトータルで前年並だった。

農産品は枝豆の構成比が高いこともあり不調だったが、ポテト類は量販店の家庭用冷食売場、C&C で伸び、デリカ向け含め好調だった。全体的には、コロナ禍によるイベント自粛の影響があり、スナック類、枝豆、焼き鳥等鶏肉加工品が苦戦した。

業態別では、一般外食向けは大きく苦戦し4割5割減という厳しい状況だった。給食向けは老健施設は堅調、学校給食は昨春休校などあったが総じて順調だが、事業所給食はテレワーク普及がありやはり厳しい。

量販デリカは昨年4~6月ごろは緊急事態宣言の外出自粛などで買いだめ傾向があり苦労したものの、下期は持ち直してきている。これらとは別に、量販店水産売場向けでフローズンチルド(-5℃帯など)のフライ、コロッケの配荷もあり、同売場が家庭内調理の増加などで伸長する中で好調に推移した。

――2020年度に実施した施策は
コロナ禍で直接の商談が難しい中、商品特徴をきっちりお伝えいただけるよう、動画も含め販促資料作りを整備・強化した。動画では、現場でのオペレーションもより分かりやすくしている。

また、新規ルート開拓ではC&C など元気な売場への提案を強め、採用を増やすことができた。

――足元の市場環境は
前年不調のウラで4~5月は2ケタ増だが、一昨年(2019年度)比で戻ったとは言えない。ファストフードは引き続き好調だが、一般外食は大幅改善しているものの、一昨年比では6、7割程度、ファミリーレストランも8割ほどではないか。給食市場も学校・老健は堅調だが、事業所給食は苦戦気味が続いている。量販デリカは前年同期に悪かったこともあり5~10%増というところか。ただ企業によって良し悪しあり、2ケタ以上伸びているところもある。

――課題と対応・今期の施策は
コロナ禍で変化が激しく、それへの対応は必須だ。現在の変化はコロナ禍以降も残ると考える。具体的にたとえば、外食のテークアウトの伸長、量販惣菜のパック売り対応を考えれば経時変化への対応、消費期限の延長に資する商品開発が挙げられる。また、我々が得意とする水産原料に独自技術を組み合わせた商品開発も、コロナ禍とは無関係な老健施設のニーズ増を考えても重要だろうと思う。

これらに加えて、シュウマイ、春巻と競合も多い商品はブラッシュアップを重ねながら市場を作っていきたい。一方で心配なのが、既にすり身価格が上昇し、円安に振れているなどコスト上昇傾向が続いている点だろうか。
とにかく、変化するお客様ニーズの高い商品でしっかり対応していきたい。中長期的には限りある水産資源に当社技術をかけあわせ、優位性のある商品を提供していきたい。

〈冷食日報2021年6月25日付〉