2021年秋の家庭用冷食 新商品は高水準の159品、年間では6年ぶり300品超/主要冷食メーカー20社動向
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新商品数が増加した背景には、いくつかの要因が考えられる。
1つは、コロナ禍により家庭用冷食市場が拡大する中で、よりニーズも多様化しており、メーカー各社がそれに対応していった結果として新商品点数が増えたという可能性がある。後述のカテゴリー分析でも触れるが、細分類するとこれまでにないような多彩な商品が増えていることも注目される。さらには、コロナ禍以降の家庭用冷食市場の拡大を好機と見たか、中堅メーカーの積極的な商品投入も目に付く。
もう1つは消極的要因だが、コロナ禍の影響で2020年秋の新商品が極端に少なかったことの反動も挙げられる。2020年秋の新商品は106品で、1シーズン(1年間を春夏・秋冬の2シーズンとする)当たりの新商品数として、過去約20年間で最も少なかった。その反動から、温めていた商品の投入が2021年春に増加しており、それが玉突き的に2021年秋の新商品数も押し上げたことが考えられる。
一方で、メーカーや卸の幹部からは、小売店店頭での棚確保は容易ではないという話もしばしば聞く。そもそも、冷凍食品を販売するためには冷凍ショーケースが必須で、近年拡大傾向にあるとはいえ、他の食品カテゴリーと比較しても棚の面積は限られている。
さらにコロナ禍の影響からまとめ買い傾向が続く中で、定番アイテムへの集中傾向が指摘されており、店頭での人手不足と相まって棚割りの流動性は低下していると言われる。それに輪をかけて、マネキン販売などの店頭販促施策が難しくなっており、新商品の訴求が難しくなっているのは事実だろう。
加えて、コロナ禍を要因とする海外での生産・物流の停滞や、コロナ禍以前からも懸念された各種原材料の高騰といった課題も出てきており、市場は堅調ながら楽観視ばかりしていられない状況にもある。
現状、コロナ禍の先行きを見通すことは難しいが、新たなユーザーを獲得した家庭用冷凍食品の市場は比較的堅調な推移が予想される。そうした中で、多様化する消費者ニーズに対する商品提案の活発化もしばらく続くのではなかろうか。
〈メーカー別・最多は日本水産、新カテゴリー開拓が新商品増に〉
メーカー別で2021年秋の新商品の発売点数が最も多かったのは、22品を発売した日本水産だった。ただし、この調査では期中発売や地域限定の商品も含めて集計しており、同社は春季新商品発売と秋季新商品発売の間の6月に一挙7品を投入したことが押し上げている。純粋な「秋の新商品」は15品だった。15品の内訳は、米飯3品、調理品の食卓品7品、その他の調理品2品、麺類2品、農産品1品であり、期中販売7品の内訳はその他の調理品(おつまみ)4品と水産品(素材)3品となる。
とはいえ、分類が難しい新カテゴリーの商品を多数投入しているのが特徴的で、今回調理品で食卓品に分類した中でも大豆ミートの「【VEGETABLE MEAT】デミグラスハンバーグ」、フライパン調理の洋風水産メニュー【SmartSeaCook】2品、その他の調理品に分類した新カテゴリーの幼児食【ニコパク】2品やおつまみの【おうちTIME】4品、また麺類に分類した【デリシャスKitchen】のカップフォー2品に、水産素材品3品と、これまでなかったような商品が多い。一方で、今回は弁当品の新商品はゼロだった。
次いで新商品の発売点数が多かったのは、18品を発売したニップンだった。内訳は麺類(パスタ)7品、弁当品(パスタ)1品、その他の調理品5品、米飯(個食)2品、スナック3品となる。同社も新カテゴリーの商品が多く、その他の調理品に含めた5品は【ニップン よくばり御膳】【ニップン 魅惑のプレート】のワンプレート商品、パスタの1品は素材品「オーマイ 生パスタシート」、米飯の1品は健康志向の「ニップン 豆腐から作ったお肉のキーマカレー」、またスナック3品はポケモンコラボのホットケーキ、マフィン、ショコラケーキと並ぶ。
このように、新商品点数が多かった2社が投入した新商品からは、新市場開拓の意図が読み取れる内容となった。
また、今秋の新商品をメーカー別で見た際に目につくのが、中堅メーカーの新商品点数が増加傾向にある点だ。下の表では「その他メーカー」に含まれてしまうが、トロナジャパンが14品と全体でも5位タイの新商品数だったほか、イートアンドフーズが9品、ケイエス冷凍食品が6品、米久が5品と積極的に新商品を投入している。各社とも、コロナ禍以降の市場拡大を機に、事業拡大を目指している様子が伺える。
〈冷食日報2021年9月27日付〉