マルハニチロ 食品事業は想定以上に順調推移、北米鮭鱒撤退も養殖・海外まき網事業に課題残る/池見社長年末会見

マルハニチロ 池見社長
マルハニチロは12月2日、東京・豊洲の本社で年末会見を行い、池見賢社長が2021年の振り返り、今期が最終年度の中期経営計画「Innovation toward 2021」の進捗について要旨次のように話した(主に食品事業に関する部分)。

【2021年の振り返り】
コロナ禍の事業全体への影響としては、巣ごもり消費が定着し、家庭用冷凍食品や中食向け商品が堅調に推移し、水産物も家庭内消費向けの商品は好調だった。一方、外食向けは大変苦戦したが、ここへ来てワクチン接種の進捗で少しずつ人流が回復してきている。ただ、残念ながら高級品は宴会需要等が回復しなければ難しい状況にある。

注力している海外事業では、欧米の水産物需要は大幅に回復してきた。海外漁業事業では補給国のロックダウンの影響で支障があったが、現在は回復している。ただ、海外の加工事業ではタイおよび2020年度に子会社化したベトナムで、全体としてはコロナ禍の影響があり、操業はタイで85%ほどに回復したが、ベトナムは2割を超える程度で厳しい状況が続いている。

世界で水産・畜産物の需要が回復する中で、ここへきて原料が高騰し、コンテナ不足、海上運賃高騰があり、海外の市況の回復はあるものの、国内向けに関しては不安要因がある。

その中で当社の事業は、水産資源セグメントは上期、増収増益と順調に回復した。一方でタイ、ベトナムの労働力不足、コンテナ不足はあり、エビ、チキンの搬入が懸念されている状況にある。そうした中、中国へシフトする対応を進めており、これは順調に進んでいる。

加工セグメントは、2020年同様、上期も増収増益と順調に来ている。

家庭用冷凍食品はマーケットが拡大する中で引き続き順調に推移してきたが、原材料価格の高騰の影響があり、11月25日に値上げを発表した。今後、2022年2月1日出荷分から調理品・農産品の値上げを実施する。

家庭用加工食品はデザートが順調も缶詰は前年度の反動で苦戦、ソーセージは競争激化と原料価格上昇の影響があり、全体で減収減益となった。

業務用食品は2020年度大変苦戦し、外食、ホテルは依然苦戦が続くが、キャッシュアンドキャリー、量販惣菜、CVS、生協宅配、介護食といった市場を強化でき、大幅に改善した。

また、セグメントとしては唯一、物流セグメントが苦戦し減収減益となった。コンテナ不足により搬入が減り、入庫減少が続いている。また、2020年度に新設した名古屋物流センター稼働に伴う償却費の増加もあった。

【中期経営計画「Innovation toward 2021」の進捗】
数値目標として売上高1兆円・営業利益310億円を掲げ、今期が最終年度となるが、5月に発表した今期の予算は売上高8,200億円・営業利益200億円と、残念ながら大幅未達の見込みだ。

売上高では収益認識に関する会計基準変更で約600億円の減少要因があった。そしてコロナ禍による要因もあったが、それで言い訳にできない3つの課題〈1〉大洋エーアンドエフの海外まき網事業〈2〉養殖事業、特にマグロ完全養殖事業〈3〉北米鮭鱒事業(ピーターパン・シーフーズ社)――で、これらが今中計期間に想定と異なる動きとなり、損失に繋がった。

このうち〈3〉は既に2020年度に完全撤退しており、次期中計では〈1〉〈2〉の事業の立て直しが課題となる。

食品事業は、今中計期間中、当初の想定を超える順調な推移をした。不採算工場であったマルハニチロ北日本の宗谷工場、直営の夕張工場を整理した上で、ヤヨイサンフーズの新工場を気仙沼で再開するなど、工場の再編を行った。直営工場の中では、群馬工場で来年の8月をめどに、需要の高い冷凍麺製品の新設ラインの設置を進めている。
また、中期経営計画と一緒に策定したサステナビリティ中長期経営計画で、経済価値以外の社会価値・環境価値をどう上げていくかという取り組みを定めた。この分野では、国際的な会議SeaBOSに参加し、世界の主要な水産会社と一緒に発信を高め、2021年の9月には取扱水産資源調査結果の公表を行うなど、サステナブルな観点を企業として不可欠な要素として、積極的な取り組みを進めている。

さらに大きな柱として掲げるコーポレートブランド戦略では、ブランド認知度を高める活動として企業CM放映、横浜DNAベイスターズとのスポンサー契約に加え、全社として当社の強みをどう発信できるか、意識改革に努めている。これらにより、外部調査によるブランド評価も徐々に上がっている。

〈冷食日報2021年12月8日付〉