ニチレイフーズ タイ産チキンの生産平常化前倒し、新常態における変化「冷凍機能が果たせる事業機会が広がっている」/竹永社長2021年末会見

ニチレイフーズ 竹永社長
ニチレイフーズの竹永雅彦社長は12月7日のニチレイグループ年末会見で、2021年度の概況と来期に向けた施策について説明した。その中でタイ産チキンの生産の平常化は当初見込みを前倒しして、来年春になる見通しを明らかにした。価格改定の追加実施の可能性も示唆した。

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2021年度下期から来期に向けた方針について、既存事業領域の強化と新たな事業機会の創出、社会課題の解決の3点から説明した。

既存事業領域の強化として第一に挙げたのが、タイのチキン生産について。現在休売中の商品は、家庭用では「若鶏たれづけ唐揚げ」だけだが、ほかの商品も数量を抑えて販売している。業務用でも複数のタイ産チキン商品を休売しているという。

タイのチキン生産工場ではデルタ株の影響で、8月にはGFPTニチレイ(GFN)では生産量が半減。現在は7〜8割まで回復しているという。これまでGFNとスラポンニチレイフーズでは来年夏ごろの生産の平常化を見込んでいが、それを春に前倒しできる状況になりつつある。両工場とも「3月くらいには何とかなりそうだ」。

タイの隣国からの作業員を雇い入れられる状況となり、11〜12月に1,000人ほど雇い入れた。ただ年末商材を生産は9月から10月前半までのため、年末市場には間に合わなかった。同社ではチキンを補うために、さまざまな商品を代替提案している。

今回の経験を踏まえた対策として、第一に「かなり人手に頼っている部分が多いので、なるべく自動化していく」と述べた。またリスク分散の観点から生産・供給に対応できる国があるのかどうか検討しなければならないとした。

既存領域では冷凍野菜について「今後、健康ニーズを含めて高い成長が期待される市場だ。より一層の開発・販売強化を進め、新たな顧客創造を促進する」と話した。

竹永社長は「素材として冷凍食品を使うということがコロナ禍において根付いてきた。多くのお客様から要望されているのが、内食ではミールキットのような商品だ。当社の冷凍野菜とから揚げ、あるいはニチレイフレッシュの水産品とたれをセットにして届けている。業務用では人手不足から、1箱にメニューの食材を入れてほしい、1袋にエビと冷凍野菜を入れてほしいなどの要望も寄せられている。国内・海外の拠点で対応していこうと考えている」と話した。

2021年11月に実施した、一部商品の価格改定については「値上げについてはおおむね理解をいただいた。交渉中の業務用の一部ユーザーに対してはいろいろな商品提案や提供方法の提案を含めて商談を進めているところだ」とした。

現時点で対象外の冷凍野菜についても、為替、在庫、産地の状況を見ながら検討しているとした。またその後も様々な原料が上がっており「自助努力によって補っていくが、値上げ幅がそれを上回っているので価格改定も視野に進めなければならないと考えている」とした。

新たな事業機会創出について「各業態が加速度的に変化続けており、そこには冷凍機能が果たせる事業機会が広がっている」と述べ、「食の新常態をとらえつつ、高まるパーソナルユースの需要を充足するには『個食』『料理素材』『健康』の3つの機能が求められる」とした。

そのうち個食ついては「単独世帯の増加、慢性的な人手不足を背景に食全体においてニーズが拡大する。個食では栄養バランス・おいしさ・即食性の三位一体を独自の価値として、冷凍マーケットの拡大を図る」とした。2022年2月にライン増設する山形工場はパーソナルユース需要を狙った工場だ。「山形工場で新たな個食の生産が始まる。当社独自の価値を具現化した新たな提案に期待してほしい」とした。

料理素材ではアッセンブルされたキット商品を拡充する。「料理の余白を残す素材商品は多彩なメニューへの汎用性が大きな価値だ。多様なパーツ素材の組み合わせは出来立てと省力化を両立させ、あらゆる業態で高まるニーズにこたえられる。順次、商品展開を進める」とした。

健康については国の方針である健康寿命の延伸への貢献として、「当社の強みであるおいしさの再現技術と、長年培った栄養素のコントロール技術を土台に、研究開発に裏打ちされた、新たな技術力を駆使して、おいしさと健康を両立する冷凍ならではの差別化技術の確立を目指す」とした。チキン、米飯、凍菜の主力品でも健康コンセプトの開発を加速させる。

〈冷食日報2021年12月10日付〉