ニチレイフーズ「冷やし中華」10億円超の売行、“レンジでチンして冷たく仕上がる”驚きの技術に注目集まる、メディア露出も追い風に
ニチレイフーズが今春の新商品として発売した「冷やし中華」は、販売金額ベースで10億円を超える売れ行きだという。
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“レンジでチンして冷たく仕上がる”という驚きの技術が話題となり、多くのメディアに取り上げられたことも追い風となった。この秋で一旦終売となるが、冷やし中華という、これまで冷食売場に無かったメニューで人をひきつけたことは、冷食市場への貢献度としても大きい。
氷がマイクロ波の影響を受けにくいという特性を利用して、電子レンジで冷たい麺メニューが仕上がる新製法は、発表当初から業界内でも驚きをもって迎えられた。
商品の構造はこうだ。トレーに入れた冷凍中華麺の上に氷を散らし、そのわきに具材を詰めた、取り外し可能な2段トレー、タレの袋を別添している。具材は自家製煮豚、錦糸卵、きざみオクラ、紅ショウガの4種だ。調理方法はタレを取り出して、麺と具材をレンジで2分50秒(600W)加熱する。ラップは不要だ。レンジから取り出し、溶け残った氷と冷たいタレを麺に混ぜ合わせることで、冷たい麺が出来上がる。そこに彩りよく具材をトッピングして完成だ。
業界内では、この新製法に皆が唸った一方で、商業的な成功に懐疑的な意見もあった。それは、冷やし中華はチルド売場で買う認識が消費者に浸透していること、そして一般的な冷凍パスタなどの個食麺と比べて高単価であることからだ。
ニチレイフーズでは新商品の発表と同時に、「冷やし中華」調理体験会をメディア向けに開いた。「冷やし中華はじめました」の持ち歌で有名なAMEMIYAさんがPRキャラクターとして登場し、オリジナルソング「冷やし中華チンしました」を披露。その後も、驚きの冷凍食品として各種メディアで度々取り上げられている。
メディア露出も追い風となり、想定以上の配荷を獲得し、気温の上昇とともに店頭の回転が加速した。KSP-POSでは3月1日~8月14日累計(9週~32週)で「冷やし中華」は28位。ハイシーズンとみられる6月からの累計(22~32週)だと16位に上がる。これは日清製粉ウェルナの「ママー 大盛りスパゲティナポリタン」に次ぐ順位。新商品としては傑出している。
「冷やし中華」はニチレイフーズが注力する、パーソナルユース需要へ向けた、家庭用商品の第1弾となる。これまでレトルト食品を製造していた、同社の山形工場(山形県天童市)の1棟を冷食工場に衣替えし、製麺ラインを導入した。竹永雅彦社長は「山形工場で実現したかったのはパーソナルユースの商品づくりだ。家庭用では技術を導入して、あっと驚く商品を作っていくが、業務用にはパーソナルユースに最大のチャンスがある。人手不足、また老健・福祉施設にはバックヤードが狭いなどの課題がある。個食市場の可能性は大きく、冷凍食品の出番だ」と話している。
「冷やし中華」はこの秋に一旦終売となり、今秋の新商品「極太つけ麺」に切り替わる。この新商品にも氷で冷たく仕上がる技術を採用している。現在市場にある、つけ麺商品は冷食を含めて、麺を加熱した後に水でしめる必要がある。スープと麺の器も用意しなければならない。この調理と洗い物の手間を省ける点が大きな差別化ポイントになるとして、需要を見込む。麺を追加熱することで、麺もつけ汁も温かい“熱盛り”にすることもできる。
〈冷食日報2022年8月29日付〉