冷食市場の拡大傾向続く

2015年は日本にとって戦後70年の節目となる。日本人が歴史を振り返り、またそれを通じて自分自身と向き合う機会は自ずと増えるだろう。また2015年は2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて本格的な準備が始まるときでもある。歴史の振り返りを通じて、近い未来への目標に進むことで、日本全体が良い方向へ向かうことを期待したい。

さて昨年は食品業界にとって逆風が強まった年といえる。消費税増税に始まり、急激な為替変動に伴う原材料価格の高騰、食の安全・安心に係る問題もいくつか、大きく取り沙汰された。一昨年の政権交代直後にあった景気回復に対する期待も薄れつつある。

このような環境の中にあって、冷凍食品の国内生産量は5年連続で増加する見通しだ。これまで牽引役だった家庭用の成長は鈍化しているものの、業務用の需要は惣菜類を中心に底堅い。今年も冷食市場は全体として拡大傾向が続く見込みだ。縮小する国内市場において数少ない成長産業といえる。

一方で小売業の競争激化、消費税増税後の需要の伸び悩みを受けて、納入価格の値下げ圧力は強まっている。企業収益が圧迫されるなか、昨年10月末以降の急激な円安が決定打となり、冷食メーカー各社は2月~3月からの値上げに踏み込んだ。

今年の大きな焦点はこの値上げをいかに円滑に浸透させるかにある。ただし今年は価格志向が強まるとも予想されており、価格改定を浸透させるためには、より魅力的な商品・サービスの提供を通じて、市場の理解を得ていくことが必要だ。

その方向性は既存カテゴリーで明確な差別化をうたえる商品の開発とそのプロモーションの展開、またはユーザーや販売チャネルに適したきめ細かい商品や提案のいずれかに収れんされる。

前者の例としては、味の素冷凍商品が改良を続けている不動のナンバー1商品である「ギョーザ」、また昨年のニチレイフーズのヒット商品「本格焼おにぎり」が挙げられるだろう。いずれも商品力とプロモーションがうまくかみ合って販売を伸ばした。

後者の例としては、主に業務用で展開されているようなメニューやオペレーションの提案を組み合わせた、商品価値の訴求がある。家庭用でもメニュー提案によって利用頻度を上げようする取り組みが行われてきたが、今後はさらに踏み込んで、業態や地域に合わせた商品開発に取り組む必要がある。