日清食品冷凍、夏の麺需要を拡大 上期10%増収を見込む
日清食品冷凍は夏場の総需要拡大を目指し、今夏の販促プロモーションを強める。「“夏のめん”は、日清にお任せ!」をMDテーマとして、夏の新商品とともに今夏の販促を展開する。春の値上げが需要動向に与える影響はいまだ不透明だが、同社としては夏需要の底上げで業界平均(同社では上期総需要を前年比2~3%増と予想)を大幅に上回る10%程度の増収を見込む。
同社は21日、夏向け新商品を発表した(既報)。業界の慣例となっている、春・秋の年2回行う新商品発表を見直し、年4回に提案頻度を高める。新商品とともに季節性やトレンドを反映した販促を展開していく。
今夏は主力の「スパ王プレミアム」シリーズで、辛口メニューやトマトを使ったメニューを「夏スパ」と銘打ち販促を展開する。新商品としては「チョリソーと赤ピーマンの赤のアラビアータ」を6月1日に発売する。
これまで小売店頭ではパスタ商品の夏メニューへの切り替えなどは、ほとんど意識されてこなかったという。切り口を明確にして夏提案の浸透を目指す考えだ。
スパゲティ以外の麺類では「刺激」・「さっぱり」、「簡便性(汁なし)」・「ご当地・本格(汁めん)」をキーワードに販促を展開する。例えば“夏のご当地麺フェア”として新商品の「台湾まぜそば」や「沖縄風ソーキそば」など、“夏の旨辛麺”として同じく「台湾まぜそば」のほか、トップシェアの「汁なし担々麺」や「酸辣湯麺」などの商品群を提案する。「“名古屋めし”フェア」の提案も計画している。麺類とともに、スナック類も夏場の需要期に合わせて販促提案を進める。
荒木英明取締役マーケティング部長は今夏の市場予測として、春に業界全体で商品値上げが進んだことを契機として、「小売りのプライスラインが整理された」とし、その一方でEDLP価格による「消費者の購買動機の減少」をカバーするために、価格ではない購買動機の創出が必要と強調する。
売場の活性化が必要となるが、さまざまな販促提案を打ち出すために、今後はNBの需要が高まると予想。特に夏場の需要が高まっている、冷凍麺が今上半期の冷食需要の拡大を主導すると見込む。
同社調べによれば、2014年度の冷食(調理品)市場規模は5,049億円で前年比3%減となったが、荒木取締役は「冷食市場は鈍化するも成長トレンドにあり、間口も奥行きもまだまだ広がる」との見通しを示し、中でも今夏は「麺類が回復のリーダーになる」とした。
14年度は麺類の市場規模も970億円で前年度比3%減と、業界統計始まって以来、初の前年割れとなった。ただしそのような状況の中でも、夏場においてはスパゲティを含めた“汁なし”商品群の需要が高まっている。
同社調べでは、通年で見るとスパゲティの市場規模は前年並み、ラーメンは2%減、焼そばは3%減だったが、7~8月はいずれのジャンルも前年を上回って推移した。
特にラーメンにおいては汁なしメニューの躍進が際立っている。汁物が9%減の12.2億円だったのに対して、汁なしは3.9億円と規模は小さいものの178%増と大幅に伸長した(グラフ参照)。汁なしの内訳を見ると、つけ麺が1億4,800万円で95%増、汁なし担々麺が9,100万円で173%増、「その他」が1億4,900万円で409%増–となった。荒木取締役は「スパゲティの需要が拡大してきたところ、そのユーザーが類似の商品である汁なし麺へ購買の幅を広げている」と分析する。
同社にとって麺ジャンルは「全カテゴリーを網羅し、豊富なバリエーション、プライスラインをそろえ、尖った商品もある。グループシナジーも活用できる」ことから、強みを発揮できる分野。一方で市場動向は店頭売場の確保によって左右される面が強い。夏場はアイスとの売場争いもあり、冷食と夏のイメージをつなげる取り組みをいかに浸透させるかが課題となる。