冷食の販売意欲強める-小売 メーカーの新提案も広がる
東日本大震災から5年がたった。震災後に冷凍パスタなどを中心に急速に市場を拡大してきた家庭用冷凍食品は農薬混入事件や消費増税、昨年初頭に各社が実施した値上げも影響して、成長が鈍化している。しかしその一方で小売サイドの販売意欲はここに来て強まりを見せている。大手コンビニエンスストア(CVs)が即食型商品の一つとして冷食に力を入れ、スーパーもまた売場を拡大するとともにオリジナル商品の開発に腰を入れ直している。小売店頭にはすでに春の新商品が出回り始めているが、今春はメーカー各社からも市場の変化に呼応した新商品が目立った。
15年の家庭用冷食の国内生産量は、日本冷凍食品協会によれば14年(暦年)を若干下回ると予想されている。出荷金額ベースでは各社の価格改定もありプラスになる予想だが、数量ベースで見れば5年ぶりに前年を下回った14年に続き、2年連続のマイナス成長となる可能性がある。
数量減の要因としては消費増税や値上げのほか、従来の全品割引セールからEDLPに転換した一部のスーパーが販売不振に陥ったことも挙げられる。
スーパーが近年、販促手法を変え、また扉付きショーケースへの転換とそれに伴う売場拡大に対応するために品ぞろえや商品の見せ方を模索してきた一方で、消費者の買い場の変化も起きている。CVsの台頭だ。
ローソンは次年度から、冷食とアイスクリームを分けて専用ショーケースで販売する方針を打ち出した。これでCVs大手3社の冷凍ケース導入の方針は足並みがそろったことになる。
CVs最大手のセブン-イレブンは昨年、冷食と惣菜のまとめ買いキャンペーンを実施し、3月現在も同様の企画を展開している。小売業態間の販売競争が強まるなか、主要販路であるスーパーの売場活性化が業界として喫緊の課題となっている。
イオンはPBの新シリーズとして、世界の本場の味を家庭で楽しめる「トップバリュ ワールドダイニング」を発売した。麺・米飯メニュー27品のうち18品が冷食だ。
メーカーサイドからの新ジャンルの提案も今春は目立った。近年大きなテーマとなっている夕食向けの提案のほか、健康機軸の商品が複数あらわれている。
味の素冷凍食品は冷凍フルーツとシリアルをカップに入れた「旬の果実のグラノラ」を新発売した。朝食シーンの開拓となる。これまで冷食の棚には見られなかったカップ容器も新しい挑戦だ。
ニチレイフーズは夕食惣菜に新シリーズ「匠御菜(たくみおかず)」を投入したほか、個食米飯を本格的なエスニックメニューにして需要の掘り起こしを狙う。
明治はこれまで市場になかった、リゾットをワインと楽しむイメージと共に提案した。
健康機軸の商品としては昨年新規参入した江崎グリコによる「糖質オフキッチン」シリーズの麺メニューに加え、今春は日本製粉が「オーマイPLUs」として糖質オフを発売、オメガ3脂肪酸のアマニ油入り麺メニューも投入した。オメガ3では日本水産もEPA・DHAを豊富に含んだ丼の具を発売している。
ほかにも縦型パッケージなど包装形態の工夫や、低迷する弁当商品ではウェブサイトの活用など、変化している市場に対する需要拡大の取り組みは着々と進められている。