エア・ウォーター 資源循環モデル施設「地球の恵みファーム・松本」建設、未利用木材や食品残渣による発電施設、陸上養殖・農業ハウスを併設
エア・ウォーターは長野県松本市に、地産地消エネルギーによる資源循環モデルの開発施設「地球の恵みファーム・松本」を建設する。
市内の間伐材など未利用木材を使ったバイオマスガス化発電と、食品廃棄物と使ったメタン発酵発電のプラント、およびサーモンなどの陸上養殖とトマトなどの農業ハウスを設置し、生成したエネルギーと資源を施設間で相互利用するほか、地域に還元することで、地域における循環型モデルを実現する。10月下旬から本格着工し、2024年夏に全面竣工する予定だ。
エア・ウォーターグループは酸素、炭酸ガス、人工海水など農業や陸上養殖に欠かせない商材をもっている。この施設で検証した設備や事業モデルを他地域でも展開することで、脱炭素社会への貢献と事業拡大の両立につなげていくとしている。
エア・ウォーターは2020年から長野県安曇野市にある、エア・ウォーター農園の安曇野菜園にバイオマスガス化発電設備を導入して、地域の未利用木材を活用した発電、および排熱やCO2を活用したトマト栽培に取り組んできた。
今回発電施設として、バイオマスガス化発電プラントとメタン発酵発電プラントとを併設するのは、木質資源が豊富な地域ばかりではないことから地域特性に合わせた組み合わせを提案できるようにするためだ。
バイオマスガス化発電には今回、Xylergy(キシラジー)社の「NOTAR」を採用した。通常の木質チップだけでなく、竹や剪定枝などこれまで使われていなかった様々な原料が使用できるのが特徴だという。発電による電気はFIT(固定価格買取制度)により売電するが、熱は陸上養殖と農業ハウスに利用、CO2は農業ハウスに利用するほか、エア・ウォーターが開発したCO2回収・ドライアイス製造装置を使った“グリーンドライアイス”として供給する。また灰は肥料として活用する。メタン発酵発電は原料として、同市にある飲料グループ会社のゴールドパックからお茶やコーヒーの粕をまた近隣の食品工場から食品廃棄物を受け入れる。原料が微生物により分解されて発生するバイオガスによって発電する仕組みだ。バイオマス発電と同様に熱とCO2を活用、発酵残渣は肥料として利用する。
陸上養殖について、エア・ウォーターではこれまで酸素や人工海水など、陸上養殖向けの商材の販売実績はあったが、陸上養殖そのものの運営は初めて。半閉鎖型の陸上養殖プラントでサーモンやバナメイエビの養殖を行う。水温や酸素・アンモニアの濃度などセンサーで水質管理を行い、IoT化によるスマート陸上養殖として高密度化を図る。また非可食部はメタン発酵および肥料に活用する。
メタン発酵発電と陸上養殖の組み合わせは前例がなく、「新たな資源循環を実現したい」(執行役員資源循環ユニット長・末長純也氏)としている。
農業ハウスもAI・IoTを活用したスマート農業ハウスを実現する。熟練農家の栽培ノウハウをプログラムに反映した、独自開発の「エキスパートシステム」を活用して、初心者でも高収穫を得られる仕組みを確立する。
まずは2022年10月に陸上養殖プラントに着工、年明けから運用を開始する。2023年1月にバイオマスガス化発電プラントと農業ハウスに着工、そのうち農業ハウスでは6月から栽培を開始、バイオマス発電は8月に運転を開始する。さらにメタン発酵発電プラントは来年7月に着工し、すべて竣工するのが24年夏ごろとなる。
〈冷食日報2022年10月3日付〉