ニチレイ大櫛社長「長期経営目標2030年の姿」実現に向け変革の期間、環境と調達は特に優先度を上げる

ニチレイ・大櫛顕也社長
ニチレイ・大櫛顕也社長

ニチレイは12月6日、ニチレイ本社(東京都中央区)でニチレイグループ年末記者会見を開いた。

ニチレイの大櫛顕也社長をはじめ、各事業会社の社長が列席。大櫛社長は「(現中計)『Compass Rose2024』は『長期経営目標2030年の姿』の実現に向けた、変革の期間と位置付けている。様々な事業変化をリスクとしてとらえるのではなく、新たな機会・チャンスととらえ、サステナビリティ経営の加速と資本効率を追求し、新たなステージを目指す」と語った。

大櫛社長は「5つの重要事項(マテリアリティ)」についてグループの取り組みを説明した。第1に「食と健康における新たな価値の創造」について。これは事業会社が進める事柄と持株会社が主導する事柄とがある。後者は既存領域を超えた挑戦に位置付けており、今年度は昆虫食のスタートアップTAKEOに出資した。

大櫛社長は「長い目で見ればタンパク質を獲得していくことは大きな課題だ。すべてが置き換わることはないだろうが、世界人口が増加する中、代替タンパクは必要となる。植物性の代替タンパクがある一方で、昆虫タンパクは東南アジアではもちろん、欧米でもレギュレーションが出来ており、マーケットが存在している。日本でもイベントに行くとかなりコアな客がいる。このマーケットに冷凍食品のメーカーとして一番乗りで参入したいと考えた」と述べた。

第2に「食品加工・生産技術力の強化と低温物流サービスの高度化」について。1つは海外事業が新たに収益の柱になることを目指す。海外売上高比率は2024年度に20%以上、2030年度に30%以上を目標にしている。

また国内事業では慢性化している労働力不足に対して、デジタル技術の導入を推進し、省人化を進める。また顧客側の人材不足の課題を解決できる商品・サービスの提供を推進する。第3に「持続可能な食の調達と循環型社会の実現」について。2022年4月にサプライヤーの行動規範とサプライヤーガイドラインを制定した。また取締役会の諮問を受けて、サステナビリティ委員会でも議論を重ねている。

大櫛社長は「今後さらにサプライヤーとのコミュニケーションを深め、SDGs のベースになっている人権と環境の2つに配慮したサプライチェーンの構築を進める」とした。

第4に「気候変動への取り組み」について。2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、CO2排出量削減をグループKPIにしている。国内Scope1(自社の事業活動での燃料使用に伴う直接排出量)とScope2(企業が外部から購入する電力・蒸気・熱に関する間接排出量)について、2015年比で2024年度は30%、2030年度は50%の削減を目標とする。

現中計では300億円近い環境投資を計画。食品工場や物流センターでの太陽光発電設備の設置や、再生可能エネルギーの調達、自然冷媒への切り替えによる脱フロン化を進めている。脱フロン化はニチレイフーズが今期60%まで進捗。2030年までに完了する計画だ。ニチレイフーズの竹永雅彦社長は「脱フロン化の際に新たな価値を生み出せるラインの設置を含めて進めたい」としている。

ニチレイロジグループは国内外施設で50%強まで自然冷媒化が進んでいる。ニチレイロジグループ本社の梅澤一彦社長は「2030年に75%、2030年代半ばには全面自然冷媒化の予定だが、少しでも早く切り替えを終えたい」と述べた。大櫛社長は「環境と調達に関しては特に優先度を上げて取り組みを進めている」とした。マテリアリティの第5は「多様な人財の確保と育成」。2022年7月に「グループ人財方針」を策定した。大櫛社長は「現中計では新しい時代に必要になるデジタルリテラシーやスキルの習得のために、特に人材育成を重点的に行っている」と述べた。

2024年度にDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引するデジタルリーダーを、国内主要会社の各部署に1人ずつ任命することを目指す。基礎的なリテラシー教育は約3,500人近い全社員が受講する計画だ。

今期は通期で売上高6,600億円、営業利益315億円を見込む。売上高は昨年度初めて6,000億円を超えたが、今期も前期比10%増収を見込む。利益面では「急激な為替変動、原材料・エネルギーコストの上昇など非常に厳しい環境だが、価格改定・適正料金収受、生産性の改善など、各事業会社でスピード感を持った対応策を進めることで計画達成を目指す」。

〈冷食日報2022年12月8日付〉

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