森永製菓、アスリートのための宅配食「オンキット・フォー・アスリート」発売、ミシュラン三ツ星運営のサイタブリアとメニュー開発、味と栄養を両立

森永製菓「オンキット・フォー・アスリート」
森永製菓「オンキット・フォー・アスリート」

森永製菓は、CITABRIA(サイタブリア、東京都港区)と共に、トップアスリートのための冷凍宅配食「ONKIT for Athlete」(オンキット・フォー・アスリート)を開発し、7月3日に発売した。

5日分の料理が2食ずつ入って2万5000円(税別)と高価だが、実際に食べたアスリートからの評価は高く、すでに定期的に購入している人もいるようだ。

今回の商品は、森永製菓の管理栄養士とサイタブリアのシェフが栄養バランスと味の両面にこだわり、約2年もの時間をかけて作り上げた。こうした商品を発売するに行ったのには、アスリートたちが普段食べる料理への不満があったという。開発の経緯などを聞いた。

〈共同開発の「オンキット」 レストラン品質と栄養を両立〉

森永製菓はアスリートへの支援を35年前から行っており、フィギュアスケートの浅田真央さんや、テニスの錦織圭さん、スキージャンプの高梨沙羅さんなど、有名な選手の栄養に関するサポートなども行ってきた。こうしたアスリートたちとの取り組みから、新たな商品開発にもつなげている。

サイタブリアは、レストランの運営や有名ブランドのパーティケータリングなどを手掛けている会社だ。運営している東京・西麻布のフレンチレストラン「レフェルヴェソンス」はミシュラン三ツ星を獲得している。

今回、森永製菓とサイタブリアが共同で開発した「オンキット・フォー・アスリート」は、森永製菓のスポーツ栄養士とサイタブリアのシェフが手を組み、栄養バランスと、レストラン品質の味を両立させた冷凍宅配食だ。作り立ての料理を瞬間凍結し、一番美味しい状態を保っている。

メニューは、牛頬肉の赤ワイン煮込みや、鴨もも肉のコンフィ、カレイの煮付けなど、和・洋・中・エスニック料理から10メニューを展開している。メインから副菜、スープが1セットになっていて、調理方法はすべて湯せんか流水解凍で、10分ほどで作れるようにしている。なお、米やパン、果物などは別で用意する必要がある。

1食当たりの値段は2500円ほど。決して安くはないが、レストラン品質の味を追求し仕上げたこの商品は、利用したアスリートからの支持は厚く、すでに定期購入している人もいるという。

〈開発のきっかけはアスリートの食への不満〉

冷凍宅配食を行う契機となったのは、アスリートの食への不満だ。アスリートは厳しい食事制限を行うことも少なくないため、日々食べられる料理には制限があるという。

森永製菓のマーケティング本部健康マーケティング部inトレーニングラボの井上毅彦マネジャーは「栄養をしっかり管理した食事の場合、どうしても味気なくなってしまう。それがストレスになっている人も少なくなかった」と話す。

アスリートの中には自分で料理をすることが手間だと感じる人は少なくないという。特に独身の男性アスリートにその傾向が顕著なようだ。また、井上マネジャーは「どんなに美味しい料理であっても、脂質などが気になってしまって楽しめない、という意見もあった」と明かす。そこで、アスリートへの新たなサポートとして、アスリートが好きな時に食べられる栄養と味を両立させた商品の開発が始まった。

〈「引き算」と「足し算」のせめぎ合い〉

サイタブリアは、商品開発を進める中、食事に強いこだわりのある会社として紹介されたという。「三ツ星店を運営しているだけでなく、コロナ禍には医療従事者の方に無料で弁当を配るなど、すごい取り組みをされていた。そこで我々の悩みを聞いてもらったところ、一緒に取り組んでいただけることになった」(井上マネジャー)と振り返る。

冷凍に着目した理由について、サイタブリアの村田晃洋ゼネラルマネジャーは「チルド(0度~数度保存に適した製品)の場合は保存期間が短いなど、様々な制約があった。しかし、冷凍の場合は長期間の保存が可能で、料理のバリエーションも広く、味の再現性も高いなど、冷凍の方が多くの面でメリットがあった」と語る。

ただ、商品開発は簡単にはいかなかった。井上マネジャーは「スポーツ栄養士の場合、料理の指導やレシピを作る時は引き算で考える。体重をコントロールしつつも筋肉の量を残すため、余計な要素を削っていく。一方、シェフの考え方は足し算。美味しい料理のために何かを足していくので、そこはせめぎあいだった」と話す。

シェフとしても苦労があった。サイタブリアの白石司グランドシェフは「栄養と味、この両立が本当に大変で。なかなか納得のできる味にはならず、試食したオーナー(石田聡社長)からもOKが出ない状態だった。そこをクリアし、食べた方に喜んでもらえる商品に仕上がったのでは」と振り返る。

〈開発期間は約2年 メニューの拡充など検討〉

約1年半もの時間をかけ、10品のメニューを開発した。トレーニングセンターにいるアスリートたちに振る舞ったところ、味の評価は非常に高く、試験段階で今すぐにでも買いたいという声もあったという。また、「今でも定期購入してくれている方がいるほか、遠征に持っていきたいという方もいた」(井上マネジャー)ようだ。

一般販売を開始して約1カ月。アスリートや、栄養への関心が強いインフルエンサーから着実に注文されているという。人気メニューは、牛肉の煮込みやハンバーグといった肉を使った料理や、アクアパッツアなどの魚メニューが人気を集めている。

今後はラインアップを20品まで拡充するほか、各カテゴリーや単品商品の更なる充実なども予定している。また、インフルエンサーを起用したPR施策などを通じて栄養への感度の高い一般層への訴求もより強め、月間で1,000セットの販売を目指す。

井上マネジャーは「トレーニングして、食事は我慢することが偉いという考えも一定はあって、そこをどうにか変えたいというのがこの商品を作るきっかけの一つ。こうした料理もあることを日本中に知って欲しい」と語った。村田ゼネラルマネジャーは「美味しい料理を食べて、パフォーマンスをより高めて欲しい。森永製菓さんとの取り組みで新たな化学反応を起こせたら」と力を込めた。

〈冷食日報2023年8月24日付〉

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創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
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