【冷食市場】値ごろ感と付加価値品の二極化進む、独自商品も広がる
〈販売数量は前年並み、アジアンメニューも人気〉
冷凍食品は値ごろな商品と付加価値品の需要が高まっている。節約志向の高まりから価格の安い弁当商品や、プライベートブランド(PB)商品、大容量商品の引き合いは高まっている。一方で、韓国メニューなどトレンドを押さえた商品や、有名店の冷凍食品といった、一般のスーパーでは品ぞろえの少ない商品も順調で、店舗によっては客単価が大きく伸長したという。利用シーンが広がる中、独自の品ぞろえによる差別化がより進む可能性がある。
今年の冷凍食品市場は、物価高騰により売上は前年を上回るものの、販売数量は前年並みか、前年を下回る店舗が多いという。KSP-POSのデータ(962店舗)によると、今年1~8月の累計の販売金額は前年同期比で0.9%増、販売個数は10.7%減となった。平均価格は12.9%増となっている。
価格が高騰する中、弁当商材の需要は高まっている。コロナ禍以前から弁当商品は売場から徐々に品数が減っていたが、最近では二桁伸長した店舗もあったようだ。ベイシアの広報担当は「コロナ禍において、弁当商品はダウントレンドにあった。しかし、外出や出社の機会が増えると同時に、最近では節約志向も高まり、職場や学校などに弁当を持ち込む人が増えたため、販売が伸びているのでは」と話す。元々の価格が安いため値上げの影響が薄く、値ごろ感を感じる消費者が多かったと予想する声もあった。
PB商品の引き合いもより強まっている。イオンリテールの青木郁雄食品本部デイリーフーズ商品部長によれば「価格の据え置きを宣言させていただいてから非常に好調だった。今利用している商品をPBに切り替える方もいた」という。品質や味などがナショナルブランド(NB)商品と大きく変わらないならば少しでも安いものを、という節約志向がここにも表れている。また、大容量商品も節約志向の影響もあり伸長したようだ。また、PB商品でも有名飲食店監修の商品や、昨今のトレンドを踏まえた商品が多く出ている。
値ごろな商品が伸長する一方、付加価値商品も順調に推移している。明治屋では、松屋銀座が卸売りしている、有名飲食店の冷凍食品「GINZAFROZENGOURMET(ギンザフローズングルメ)」や、ANAの機内食シリーズなど、高単価な商品が順調に推移しているという。小売事業本部商品部の須藤仁史副部長は「レストランと同等の味を楽しめるため、着実に支持を広げつつある。外食に行くのが手間だと感じる人や、急な来客の際などに役立つ商品として支持されているようだ」と話す。
イオンリテールで展開する冷凍食品専門店「@FROZEN(アットフローズン)」でも、ディナー関連の商品やスイーツなど、一般のスーパーなどではあまり扱いのない商品が好調だったようだ。青木氏は「どこの店舗でも扱いのある商品は売れにくく、他には置いていない珍しい商品の動向が非常に良い。アッパーな価格帯でも支持されている」と語る。
他方、「ファミレスなどの専門店系の商品は少し落ち着いてきた」(ライフコーポレーション近畿圏食品日配部日配食品課の野見山俊充チーフバイヤー)との声もあった。
また、韓国料理などのアジアンメニューや、スイーツも順調に推移しており、品ぞろえの強化を図る店舗も多かった。
冷凍食品への取り組みを各社とも強めており、独自商品の充実が進みつつある。その中で、ダイエーは特殊冷凍機を導入し、「イオンタウン松原」にて製造している弁当などを冷凍として販売する取り組みを開始する。消費期限を延長できる特殊冷凍品を提供することで食卓の選択肢を増やすほか、食品ロス削減などを目的に行う。フルーツや精肉などの生鮮品も特殊冷凍を施した商品を販売する予定だ。ローソンでもチルドメーカーのおにぎりを冷凍した商品として販売する取り組みを進めている。
ロス削減などへの期待もあり、冷凍食品は依然として成長カテゴリーの一つ。その中で、まだ冷凍食品を活用したことがない人も多くいる。こうした人の取り込みも重要な施策になるかもしれない。
〈冷食日報2023年9月20日付〉