味の素、宅配冷凍弁当事業を展開、献立サービス「おいしい健康」とコラボ
味の素は新事業として「食と健康」のソリューションサービスを開始。その一つとして宅配冷凍弁当事業に取り組む。
献立提供サービスの「おいしい健康」と連携して、栄養バランスが良く1食完結でボリューム感のある「栄養バランスミール」をD2Cで提供する。12月4日に開いた事業説明会で、川名秀明執行役常務冷凍食品統括が明らかにした。「おいしい健康」と連携した献立を、味の素が製品化する。生産はパートナー企業の活用も視野に入れている模様だ。
主食も入って内容量350gとボリューム感にもこだわっている。他社の冷凍弁当は230gの商品が多いという。独自の「おいしさ設計技術」(=アミノサイエンスを活かした、香り・味・食感を三位一体でコントロールする技術)による減塩と、1日当たりの栄養摂取目安の1/3をおおむね実現しているとしている。
容器は一般的な冷凍おかずセット商品に比べて約20%小型化しているという。配送や自宅冷凍庫の省スペース化につながる。選ぶ楽しさと継続してもらうために豊富なメニューをそろえる。まずは20種類から開始する予定だ。
〈B2CとB2Bを一体化、「食と健康」で横断的基盤の構築〉
味の素は成長領域として「ヘルスケア」「ICT」「フード&ウエルネス」「グリーン」――の4つを位置付ける。そのうちヘルスケア領域ではこのほど、米国の遺伝子治療薬受託製造のフォージ社を約554百万ドル(約828億円)で買収したところだ。
フード&ウエルネスでは既存領域と、市場環境の変化への対応する新サービスとの2軸展開によって、食品系事業全体で年平均成長率(CAGR)1桁後半%以上(2021~2030年度)の事業利益の成長を目指す。
既存領域はこれまで、各機能や事業が個々に進化するかたちで成長してきたが、これからは機能や事業間、国・地域間などの結びつきを強化し、融合した“オーケストレーション”を通じて新たな価値を生み出す。
そのために組織面では2024年4月から、B2C事業とB2B事業を一体化させる組織再編とD2C事業組織の新設を検討している。B2B事業がグループ売上げの30%以上を占める強みを活かして、B2B事業を起点としたフード&ウエルネス領域での進化を図る。
具体的に、B2B顧客資産をB2C事業と連携させることを模索する。またMSG(グルタミン酸ナトリウム)を自製するB2C事業の強みを活かした、B2Bとの事業連携の仕組みを進化させる。MSGの付加価値化の指標として、現在MSGの自社内販率は70数%だが、2030年に85%に上げる計画だ。
地域戦略として、欧米で成長軌道に乗っている冷凍食品を東南アジアやラテンアメリカで展開する。日本事業の再成長も掲げた。特に工場稼働率の伸び悩みが課題だとして、製造・販売・製品開発の連携強化を強調した。
製品の提供だけではなく「食と健康」のソリューションサービスを提供する新たな事業を展開する。健康診断データやデジタルマーケティング、受注から決済、配送業務などでパートナー企業や自治体との連携による「食と健康」に係る横断的なプラットフォームの構築を図る。
味の素の役割として、コミュニティサイト「味の素パーク」で展開する「しっかり食べチェック」で食生活の診断を行い、レシピサポートや料理をできない人には宅配冷凍弁当を提供する。あわせて補助食品も選択でき、一人ひとりに寄り添ったサポートを行う。
既存の食品事業がラージマスを対象に、最大公約数の価値を具現化した「モノ」をリアルで提供するモデル、例えれば1,000万人に年間1,000円の商品を提供して、100億円事業にするビジネスモデルだったのに対して、フード&ウエルネスの新たな事業モデルはスモール・ミドルマスを対象に、よりパーソナルな価値を追求した「コト」をデジタルとリアルで提供し、10万人に年間10万円の商品・サービスを提供して100億円の事業にするモデルだ。このような事業モデルの型をつくり100億円事業を複数創出していくことを構想する。
〈冷食日報2023年12月6日付〉