アヲハタ、凍ったままでやわらかい冷凍フルーツ「くちどけフローズン」
〈「やわらかさ」と「香り」を追求ジャム製造の知見も活用〉
ジャムを主力商品としたフルーツのパイオニアであるアヲハタは、近年特許を取得した独自製法「やわらかフローズン製法」による冷凍フルーツの商品展開を進めている。アヲハタマーケティング本部マーケティング室長富岡木子氏に開発の経緯と今後の展開について話を聞いた。
――「くちどけフローズン」の開発経緯は。
冷凍市場に着目したのは2015年頃から。冷凍市場の風向きが変化し、徐々に拡大してきているように感じ、市場分析などにも精力的に取り組んでいた。
当社は長年ジャム原料などの加工にも取り組んできており、冷凍技術についてもある程度の知見があった。「くちどけフローズン」は社内で新商品のアイデアを募った際に寄せられた商品案のなかから、原型が誕生した。
15年から商品開発を始めて、少量販売・エリア限定販売といったテスト販売による需要調査などを行い、2020年に前身となる「くちどけシリーズ」の販売をセブン-イレブンで開始した。これがX(旧Twitter)の一般投稿をきっかけに大きな反響を受け、セブン-イレブンでも人気商品としてラインアップされるようになった。
「くちどけシリーズ」は当初、フルーツに糖液を含浸させる加糖タイプの商品として展開したが、昨今の健康ニーズを受け、オールフルーツタイプ(フルーツの甘さのみで作ったもの)を検討した。かねてよりオールフルーツのジャム「まるごと果実シリーズ」を展開して知見もあり、糖液の代わりに果汁を含浸させる冷凍フルーツの開発に乗り出した。
その結果、23年からアヲハタブランドとして果汁タイプの「くちどけフローズン」シリーズの販売を開始し、24年3月13日から「くちどけフローズンスムージー用いちご」を新発売する。
――「やわらかフローズン製法」の開発の端緒について。
通常の冷凍イチゴについてはユーザーの不満としてかねてより、イチゴが酸っぱく味や品質、香りが落ちる、あるいは固いので解凍の手間がかかるというイメージが存在していた。
日本で好きなフルーツの1位にイチゴが挙げられているにもかかわらず、冷凍フルーツの中でイチゴは求心性が低いという現状があった。
当社ではイチゴ畑を保有していることもあり「イチゴを使って何らかのイノベーションを起こしたい」という思いがあった。こういった思いから、特許を取得した「やわらかフローズン製法」が生まれた。
――「やわらかフローズン製法」について。
同製法は果汁をイチゴの中にしみ込ませることで水分量をコントロールし、凍っていてもフルーツのやわらかさや香り高さを保持することを可能にしたものだ。冷凍庫から出してすぐにフォークを刺して食べられる、今までにない新しい冷凍フルーツとして訴求している。
香りの保持にも注力した。ジャムの製法で培ったノウハウを活かし、香りを閉じ込めることでフルーツ本来のおいしさや香り、甘さを楽しめる商品になった。
――新商品「スムージー用いちご」の特長について。
使用している素材は「くちどけフローズン」の「いちご」と基本的に同じだが、より小粒のイチゴを選び、家庭用のミキサーにかけやすい商品となっている。
あらかじめ果汁漬けになっていることで、はちみつなどを加えなくても牛乳のみで甘さを感じる本格的なスムージーが完成する。同品1つでスムージー2杯分が作れるため、1杯分では物足りない人や複数人でのシェアといった需要にも応えられる。
発売時期としても、冷凍需要が高まる春夏に向けて、また新年度など生活の変化により、消費者の健康意識が高まることによる需要を見込んでいる。
――今後の展開について。
「くちどけフローズンシリーズ」では、現在いちご・青りんご・白桃の3つを展開している。
「やわらかフローズン製法」を使うことで、さらにおいしく味わってもらえる冷凍フルーツはまだまだたくさん存在するため、需要性の調査なども進めながら、バリエーションの拡充は前向きに検討を進めている。新発売するスムージー用商品の拡充も発売後の動向を見ながら進めていこうと考えている。
冷凍帯の商品展開を大きな挑戦と捉えており、今後もフルーツの持つ魅力を消費者に伝えていきたい。
3月7日~13日に東京・表参道で開催しているポップアップカフェ「アヲハタフルーツパーラー」のようなイベントについては、今後も積極的に行っていきたい。
「よい商品はよい原料から」という考えのもと、創業時から原料に重点を置いて商品展開を続けてきた。今後も保存料や着色料に頼らず、フルーツの力を生かした商品を届けていく。
〈冷食日報2024年3月13日付〉