松屋銀座「ギンザフローズングルメ」、ギフト需要も伸長、「冷凍グルメ」の広がりに期待〈今井課長インタビュー〉

松屋銀座「冷凍グルメ」
松屋銀座「冷凍グルメ」

2022年に松屋銀座店にオープンした冷凍食品売場「GINZA FROZEN GOURMET(ギンザフローズングルメ)」。東京・銀座にある有名な飲食店も参加し、冷凍食品の新たな潮流として注目を集めている。また新商品として、新たな名店グルメを投入するほか、炊き立てのような白米を冷凍として発売する。食品一課の今井克俊課長に聞いた。(取材は3月1日に実施)

――冷凍食品の市況についてお聞かせください。

冷凍食品はやはり売り上げが伸びていて、一般のスーパーで販売されている冷凍食品は300~400円ほどでも十分に美味しい。最近では高級スーパーなどで2,000円以上の商品も見られるようになりました。

これまではBtoBが需要の中心だったのですが、今後はBtoCの市場はこれから伸びていくと感じています。世界の指標などを見ていると、就業率が高いほど冷凍食品を良く使う傾向にありました。日本でも女性の社会進出が当たり前になってきたため、短時間で調理でき、美味しい食事を手軽に摂れるという冷凍食品は今後も広がっていくと予想しています。以前は、「冷凍食品ってそんなに美味しくないんじゃないの?」って多くの方が思っていた印象ですが、それが少しずつ変わってきたと思いますね。

昔の冷凍食品の場合、ワンプレートの商品は特にそうだと思うんですけども、お肉やパスタとか液体に近いものを同時に解凍すると、解凍状態にムラがあって全部は美味しくならなかったじゃないですか。それが今だとある程度均一に解凍できるようになっているので、美味しくなるよう逆算して作る技術などが上がったのだと思います。

また、飲食店と同等のレベルの味を家庭で楽しめる商品を、「冷凍グルメ」と呼んでいて、今後はこの冷凍グルメが様々なカテゴリーで広がっていくと思っています。

――22年8月にオープンした冷凍食品売場「GINZA FROZEN GOURMET(ギンザフローズングルメ)」の現状は?

初年度よりは落ち着いてきたものの、依然として順調に推移しています。お買い上げの方向性も、我々の目指してきたギフトとしての需要も力強く、売上は計画を上回る状態を維持しています。ある方は1回で6万円ほど商品を購入されて、それをギフトとして贈られていました。こうした方の多くはリピーターで、ファンになっていただいたあと、ギフトとしても活用していただけています。

当社で販売している商品は、家庭でおもてなしができる、食卓を華やかにできる商品を目指していて、パッケージにもこだわりながら商品開発も行っています。それを支持してくださる方も着実に増えていて、リピート購入される方も多くいます。

値段の高い商品だからこそ商品の精度やクオリティはすごく大事で、ただ売れれば良いとは思っていないです。百貨店の商品として、安心・安全にも気を配って取り組んでいます。

コールドチェーンにもこだわりました。メーカー様の工場から運ぶためのトラックの温度、販売する際の温度、バックヤードの状態に加え、お客様が持ちかえり、それを保管するところまで、必ずマイナス15度以下で保管しなければ冷凍食品は劣化してしまうというアドバイスを頂きました。冷凍食品は一度溶けてしまうと品質は劣化し、美味しくなくなってしまいます。美味しくないと思われてしまったら、2度と買っていただけない。なので、絶対に品質を落とさないよう、デザイン性の高い保冷バッグを用意すると共に、ドライアイスのマシンも導入していて、ご自宅までの距離が近くても必ずドライアイスをつけるようにしています。

――好調なカテゴリーは。

うちの中で一番は、銀座のレストランさんの商品が一番好調に売れている洋惣菜ですね。最近上がってきているのはアイスクリームです。地方でしか売っていないものは、順調に推移していて、こうした特色の合うものはしっかりと取りそろえたいです。(次頁に続く)

〈ECの強化を検討 卸売りも堅調に推移〉

――ECの動向はいかがですか?

堅調に推移しています。冷凍食品とECの親和性はすごく高いと思います。日本全国どこからでも注文できることと、自分で持って帰る手間がいらないので、品質の劣化も防げると思っています。また、商品それぞれの特徴やストーリーを、店頭よりも深掘りしてお伝えできますので、今後はより力を入れなきゃいけないと感じています。全部の商品約300品目のうち100品目ほどしかECで掲載できていないので、もう少し増やしたいです。

また、卸売と、外商も行っていて、そっちも順調に推移しています。クレジットカードのダイナーズカードでは、値段も関係なく全国から注文いただけています。

――明治屋でも「ギンザフローズングルメ」コーナーを展開していますよね。

今は広尾と、二子玉川、博多の天神、麻布台ヒルズ店で展開しています。あとは、ダイナーズクラブの会員サイトでも販売しています。「うちでも販売したい」というお声は多く頂けていて、目標の20店舗での展開を目指して少しずつ進めています。ECをやっているのでどの地域からニーズがあるかも分かるので、将来的にはそうした地域にこちらからもアプローチしたいと思っています。

〈新商品は冷凍の「ごはん」など 特殊なスチーム技術で美味しさ引き出す〉

――他にも力を入れていることは?

卸以外だと、やはり商品開発です。お客様に飽きさせないことは大事で、商品の仕入れに加えて、独自に新しい商品を開発して世の中にないようなもの、よりお客様が求めているような新しい商品の開発を、飲食店さんに無理のない形で進めています。

発売予定の商品として、「銀座 吉澤」さんの新メニューや、新たに一緒に取り組ませていただく店舗として、「孤独のグルメ」でも取り上げられた「食堂とだか」さんのカレーや、「ミート矢澤」で有名なヤザワミートさんの商品などを、20日に発売します。

また、初めての試みとして冷凍でごはんを発売します。レンジで温めることで炊き立てのご飯が食べられる商品です。パックご飯の市場は伸びていて、もし美味しい冷凍ご飯があったらすごく良いとは感じていて探していました。そんな時、松屋銀座店に出店している「米処 結米屋」の社長から、早稲田大学発のベンチャーで、特殊なスチーム技術を持つ企業を紹介していただき、話が進みました。

松屋銀座「冷凍白米」
松屋銀座「冷凍白米」

その会社は、米の細胞を壊さずに最大限の美味しさを保ちながら調理するスチーム技術を研究していて、一度試食をさせて頂いたところ、これが衝撃を受けるぐらいの美味しさでした。家で炊いたご飯よりも味や栄養価も良くなっています。かなり驚く味になったと思っています。お客様に納得していただける味か、値段も含めて結構な勝負です。本当に自信があるのでぜひ食べてみてください。

――新たに「冷凍グルメ」を知ってもらうための取り組みは。

店頭での試食販売に加えて、百貨店の弁当に冷凍の商品を使って実際に食べてもらえるようにするなどの取り組みは行っています。まだまだ認知されていない市場なので、色々な取り組みを通じて知ってもらいたいです。

――商品開発や販売チャネルの開拓なども進められています。他にも考えている取り組みは。

あとは接客面です。売場でより商品の魅力が伝わるような形にしたいですね。お客様からも説明が足りてないという意見を頂くことがありますので、商品の特長や、シーズン性のあるおすすめ商品など、売場での見せ方をもっと工夫したいです。

今までないような冷凍食品なので需要がどこまであるのか分からないんですけど、お客様の毎日の食卓に密着した、ちょっといいものを、利便性が高く、それでいて想像を超える美味しさを届けられるよう、ずっと開発していきたいですね。

〈冷食日報2024年3月15日付〉

媒体情報

冷食日報

冷凍食品に関するあらゆる情報を網羅した日刊の専門紙

冷食日報

近年の冷凍食品をめぐる情勢は、共働き世帯の増加や家族構成の変化、また飲食店や量販店の惣菜売場の多様化によって需要が増加しています。一方で、家庭用冷凍食品の大幅値引セールの常態化はもとより、原料の安定的調達や商品の安全管理、環境問題への対応など課題は少なくありません。冷食日報ではこうした業界をめぐるメーカー、卸、そして量販店、外食・中食といった冷凍食品ユーザーの毎日の動きを分かりやすくお伝えします。

創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
体裁:
A4判 7~11ページ
主な読者:
冷凍食品メーカー、量販店、卸、外食・中食、輸入商社、物流会社、業界団体など
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