冷凍食品専門店「フローズンジョーズ」他にない品ぞろえで支持拡大、次代の冷食売場の提案につながる店舗
冷凍食品卸のアイスコが手掛ける冷凍食品専門店「FROZENJOE’S(フローズンジョーズ)」。現在展開する2店舗とも堅調に推移し、来店者1人当たりの売上も高水準にあるという。2024年7月頃に3店舗目を出店予定だ。三國慎専務取締役に聞いた。
――冷凍食品の市況をどう見ていますか。
販売点数は、コロナ禍での伸び方と比べると少し鈍化はしていると捉えていますが、今期は値上げなどもあったことを踏まえると、市場規模ではまだ伸びていると感じます。市場規模自体はコロナ禍以前からずっと伸びていて、コロナ禍に新規ユーザーを取り込んでさらに成長したと見ています。
元々は女性の社会進出が本格的になり、即食・簡便・時短といったキーワードに注目が集まりました。中でも冷凍食品はその機能のすべてを満たしていたため、利用シーンは広がったと思います。コロナ禍には、これまで冷凍食品をあまり活用されたことのない方からも利用されるようになり、販売はより増えました。小売店でも、新店やリニューアルで冷凍食品売場を広げる動きは今も続いています。まだ市場のニーズが活発だからこそこうした動きが継続しているのだと捉えています。冷凍加工技術の進化も大きかったと感じます。味が格段に良くなり、商品のレベルは向上し続けています。今後はSDGsの観点からも冷凍食品は伸びると考えていて、賞味期限が生鮮品よりも非常に長いという点でもメリットはあると思っています。
カテゴリーでは、ワントレーの商品の引き合いが増えていて、単身世帯の方だけでなく、比較的高齢の方からも支持されています。複数の食材を使ったメニューを、手作りするとなると手間がかかります。食材を使いきるのも一苦労です。そうした方にとって冷凍食品は簡便なだけじゃなく、無駄のない商品としても活用されています。
コロナ禍による変化として、もう一つ大きかったのが外食産業の変化です。コロナで打撃を受けた外食産業が、自社のECサイトや店舗で商品を販売するようになり、こうした商品を取り扱えるようになりました。コロナの前だったら相手にされなかったような有名店もです。外食と中食、内食の垣根がより薄れたように感じました。
――改めて、「フローズンジョーズ」はどのような店舗ですか。
一般のスーパーではあまり見かけない冷凍食品を充実させています。冷凍食品の卸を手掛ける中で、全国の美味しいモノや珍しいモノを毎日探していて、飽きさせない売り場づくりを心掛けています。試食も毎週のようにやってますね。
他にも、冷凍食品と親和性の高いドライ品を拡充しています。スナック類やロングライフの牛乳といった、通常のスーパーではあまり見かけない商品も取りそろえています。冷凍食品とのシナジーを発揮できればと思います。
当社は冷凍食品の卸を事業の核としています。そのため、「フローズンジョーズ」はメーカー各社の取り組みを紹介する店舗でもあります。大手メーカーの商品でも他ではあまり見かけない商品を置いているほか、自分たちで探した商品などを多数そろえています。それによって、来店される方の滞在時間は通常の小売店よりも長く、時間をかけて商品を探す方が多くいることが客単価の維持につながっていると分析しています。実際、利用される方1人当たりの売上は高水準を維持しています。その方向で成長させられれば、価格訴求による販売戦略にそこまで頼らなくても良いのではと思います。
――今、2店舗を出されています。現状はどうですか?
最初に出した元住吉の店舗は、ある意味では実験店という位置づけでして、冷食の専門店を出したらどういう需要があるのかなどを測定したかったっていうのと、試験的にいろんなMDを組んでみてどういった商品群に需要があるか、どれぐらいの容量でどれぐらいの売価設定だったら需要があるかなどを図るという意味合いもありました。そうした意味では、2号店の二俣川店は、そこで取れたデータを組み合わせて、出した店です。客数と客単価とも好調と言えます。店舗の滞留時間も非常に長いことも特徴だと思います。
商品でも、ワンプレート商品で健康志向に振ったコーナーを設けるなど、かなり振り切った取り組みも行っています。また、冷凍食品は塩分が高い、保存料や添加物を多く使っているなどの印象を持たれている方もまだ大勢いると思います。実際にはそうではない商品もたくさんあることも売場を通じて伝えられればと思います。あと、余談ではありますが、冷凍食品の強みの一つにフードロスが出にくいという強みがあります。この店はそれもコンセプトの一つになっていて、ロングライフの商品なども取りそろえました。
〈技術の進化で冷食が進化卸の立場からも冷凍食品市場を盛り上げる〉
――好調な商品群は。
「富士山グルメ」コーナーは好評ですね。中でもピザとパスタはとても売れています。やっぱりなかなか一般的なスーパーさんとかで見かけないものと、美味しいという、この2つをクリアしているモノは回転が良いです。価格も1,000円くらいで安くはないのですが、順調です。
あと、冷凍の惣菜類も順調です。弁当の代わりのような利用も見られるため、パックご飯を販売するようにもなりました。惣菜を買って、そのままごはんと食べられるようにしています。
日本人って食への関心は高いし、味にもうるさいじゃないですか。今は伸びていますが、何の手も加えなかったら、今後成長は多分止まると考えていて。やはり常に目新しい切り口での提案を続けていて、これは今後も続けて行かなければと思っています。
――3号店の予定をお聞かせください。
7月下旬にオープン予定の商業施設「ゆめが丘ソラトス」(横浜市泉区)の中にオープン予定です。1号店の路面店、2号店のエキナカ商業施設内の店舗とは異なるロケーションに出店し、ファミリー層を中心とした新たな顧客層を取り込みたいと考えています。冷凍食品だけでなく、冷凍食品と親和性の高い常温品や冷蔵品も販売予定です。ベースとなるのは二俣川の店舗ですが、色々と新しい取り組みもできればと思います。
その先についてはまだ決めかねている部分もありますが、ありがたいことに色々な商業施設からお話を頂けていて。でも、店舗を広げすぎず、身の丈に合った出店ペースは維持したいですね。
――今後はどのような部分に力を入れていきますか。
冷凍食品の卸として、価値ある商品を、適正な価格で提供することで市場の成長の一役を担いたいと考えています。「フローズンジョーズ」などを通じて、市場をより盛り上げられればと思います。
即食や簡便性などで注目を集めている市場ですが、成長した要因として最も大きいのは、やはり業界関係各社の並々ならぬ努力が一番だと思っています。食品メーカーで言うと、冷凍加工技術の革新です。例えば、天ぷらなどのフライ製品は中種からの水分移行が抑えられる衣が開発されました。冷凍のチャーハンは、プロの料理人が実際に中華鍋を振るった美味しさや食感を再現している炒め機も開発されています。包材も、外気に対するバリア性や、開けるときのストレスを軽減できるような、細かな工夫がなされていて、電子レンジは過熱ムラを抑えるなどの進化をとげています。こうしたさまざまな企業の工夫が成長につながっていると、本当に思っています。
うちの会社は卸がメインなので、フローズンジョーズという業態自体をテストマーケティングの場と捉えていて、小売業の方々への提案の場にもなっています。実際にバイヤーの方に店舗まで来てもらい、採用された商品もありました。なので、フローズンジョーズ事業は小売業として成長させるだけではなく、メインビジネスである卸売事業の価値向上にもつなげ、卸の立場からも冷凍食品市場を盛り上げたいと考えています。
〈冷食日報2024年3月19日付〉