マルハニチロ「新中華街シリーズ」が順調、「赤坂璃宮の餃子」は2024年夏から全国で販売
マルハニチロの冷凍食品は、値上げの影響で数量は若干減少したものの、売上は堅調に推移したという。「新中華街シリーズ」の「五目あんかけ焼そば」などは好調を維持したほか、地域限定で2024年春に発売した「赤坂璃宮の餃子」は、同夏から全国販売を行うという。市販用冷凍食品事業部長の金谷信一郎氏に聞いた。(取材は6月24日に実施)
――冷食市場全体をどう見ているか。
市場全体としては、2022年から値上げ環境が続いていた中で、23年度はコスト上昇への理解が進み、価格改定が反映されやすい傾向にあったと見ている。
冷凍食品に関しては、若干の数量減はあったものの、コロナ禍以降に冷凍食品の価値を新たに見直す方が多くいたこともあり、比較的堅調に推移したと感じている。
商品としては、主食や惣菜、即食系の商品が引き続き堅調だった。米飯は鶏卵不足の問題もあって少し苦戦気味ではあったが、主食系や惣菜系は好調だったと見ている。
――23年度については。
加工食品ユニット全体では売上が前期比1.8%減の971億円、営業利益は36.6%増の41億円で着地している。
冷凍食品は、23年3月に値上げを実施した効果と、麺類の好調、競合他社の撤退によるピザ類の伸長などが全体をけん引した。ただ、22年9月に発生した広島工場の火災による影響分まではカバーできず、若干の減収となった。利益面は価格改定もあって増益となった。数量については減少している。
――良かった商品は。
やはり「新中華街シリーズ」の「五目あんかけ焼そば」だ。22年8月に新ラインを導入して生産能力を増強しており、前期比で2ケタ伸びている。特に、秋にTVCMを放映した効果も大きく、姉妹品の「海鮮あんかけ焼そば」や、「牛肉オイスターソース焼そば」も好調だった。22年も高い水準で推移していたが、それを上回る結果を残せた。
一方で、「横浜あんかけラーメン」は温麺ということもあり、昨年の秋頃まで気温の高い状態が続いたことも影響し、計画には届かなかった。
その他、弁当商材は2ケタ増で順調だった。値上げ基調が世の中的に続き、他のカテゴリーを含め、食品全体で商品の単価も上がる中、小分けのフライ商品などは割安感を感じられる点などが評価されたのか、逆に好調だった。節約志向から、弁当の持参率が上がっているということも影響していると考えている。
――24年4~5月については。
5月から6月にかけて放映した新たなCMの効果で、「横浜あんかけラーメン」や「五目あんかけ焼そば」は非常に伸びた。また、「あおり炒めの焼豚炒飯」など「新中華街シリーズ」全般が好調に推移している。昨年の同時期と比べると2ケタ伸長となった。
――新商品については。
23年秋に発売の「あら挽き肉しゅうまい」が順調だ。広島工場で製造していたものを復活させたところ、配荷は順調に進んでおり、引き続き販促を強化していく。
今春発売の商品では、関東エリア限定で発売していた「赤坂璃宮の餃子」の評価が非常に高く、今年の夏から全国販売に切り替えて強化していく。導入店で販促などを実施したところ、堅調な動きを見せている。全国で展開して餃子カテゴリーの拡大に挑戦したい。
あとは弁当向けのカップ商材の「オクラ3種おかず」が非常に良い動きを見せている。
新たに追加した「WILDish PROTEINシリーズ」は、通常のシリーズよりも価格が高いこともあって、想定ほど配荷は進んでいないが、サッカー元日本代表の槙野智章さんを起用したWebCMを公開するなど、ウェブでの訴求を中心に取り組んでいる。冷凍食品の新たな可能性に挑戦したシリーズで、今後もこうした取り組みは進めていく。
――値上げについては。
この為替の状況に加えて原料価格も上がっている中で、適切に判断する必要があると感じている。特に輸入品は想定よりも厳しい状況にある。工場の稼働も意識しつつ慎重に判断したい。(7月3日に家庭用冷凍食品の値上げを発表)
〈調理オペレーションの簡便化なども継続的に〉
――今後の取り組みについては。
既存商品や主力商品は改良を続けていくと共に、調理オペレーションの簡便化なども継続的に取り組んでいく。新商品については、従来の枠にとらわれない新たな形態の新商品開発や、当社グループのリソースを積極的に活用した商品開発も念頭に置いて進められればと思う。
中長期的な目標としては、物流の「2024年問題」のような問題にも注力していく必要がある。開発の段階から省人化や省力化を意識した商品開発も積極的に行っていきたいと思う。また、循環型社会に対応する貢献できる包装容器の使用や、プラスチックの削減、持続可能性を意識した原料を使った商品の投入などにも積極的に取り組みたいと考えている。
〈冷食日報2024年7月8日付〉