ニッスイの家庭用冷凍食品、「まんぞくプレート」など好調、冷凍食品の利用シーンは拡大傾向 認知の更なる向上進める
2023年度におけるニッスイの家庭用冷凍食品の売上高は堅調に推移した。2024年4~5月も順調な動きを見せているという。2024年春発売の「まんぞくプレート ふっくらごはんとカツカレー」なども好調で、ワンプレート商品などを通じて冷凍食品の利用シーンの拡大や、利用頻度の増加を狙う。熊谷賢一家庭用食品部長に聞いた。(取材は6月17日に実施)
――市場全体の動向は。
個数ベースでは落ちているが、金額では各カテゴリーとも前年を上回っている。ワンプレート商品は、順調に推移しており、市場も伸長しているので、今後の伸びしろは大きい。近年は単身世帯が増えていて、食事の時間もそれぞれ違う。冷凍惣菜や冷凍宅配弁当なども伸びており、少人数世帯に対応できている商品は今後も堅調に伸びるのでは。中でもネット販売の冷凍弁当は、若年層の利用が多いと聞く。価格的にはスーパーで販売されている商品より高いものが多く、その辺りがどう評価されるのか、興味深く思っている。
売場では、惣菜系や麺類など人気の商品に加えて、冷凍食品に新規参入した企業の商品を見かける。冷凍食品業界では長年利用者を増やすための取り組みを行ってきた歴史がある。新規プレイヤーの増加で間口も広がると思うので、新たに冷凍食品を利用してみようと考える方が増えれば良いと思う。
――2023年の動向は。
市場の動向と大きな差はなく、金額は前年度比で4.3%増となった。カテゴリーごとでも大体同じような形にはなっているが、スナック類のたこ焼きについては、卵不足で商品供給が不安定となり前年割れとなった。他の商品は、おおむね堅調に推移したが、ワンプレート商品や個食の麺類は順調で、弁当惣菜は顕著に良かった。ただ、数量については、前年を割った。
金額が伸びていても、数量の落ち込みによる工場稼働へのマイナスの影響がある。増量や広告展開などのキャンペーンにも取り組んだが、数量の落ち込みはカバーしきれなかった。
――弁当惣菜などが好調だった理由は。
節約のための弁当利用に加え、少人数世帯が増えたことで弁当惣菜を食卓惣菜として利用される方が増えた。1人分、2人分をわざわざ作るのは大変なので、冷凍食品や惣菜売場のものを利用される方が増えたことが大きかった。冷凍の場合は保存できる期間が長いという点でも支持されている。
――2024年度に入っての動向は。
まだ4~5月分のデータしかないが、2023年までの値上げの影響による数量の落ち込みからは回復し、売上・数量ともに前年を超えていて良いスタートを切ったと感じる。ただ、原材料価格などの高騰は今も続いていて、為替も高止まりしたままだ。さまざまなコスト削減にも取り組んできたが、米類が大きく高騰するなど厳しい環境になっている。(6月27日に、9月1日納品分からの一部商品の値上げを発表)
――今春の新商品については。
「まんぞくプレート ふっくらごはんとカツカレー」が最も好調だった。冷凍食品で白ご飯の商品は少なかったので、満足していただいた方が大勢いるのは我々としても大変嬉しく思う。
冷凍食品は40~60代の女性の利用が多く、男性など冷凍食品の利用頻度が少ない層を取り込みたかった。この商品の想定ターゲットは、冷凍食品の利用頻度の少ない若い男性に定め、狙い通りの動きを見せている。昼食や夕食のときに活用してくださる方が多くいた。これまで、こうしたシーンに利用されていた冷凍食品はパスタやラーメンといった麺類だった。しかし、ワンプレート商品が選択肢に入るようになったことで、冷凍食品を活用していただくシーンも広がっており、嬉しく感じる。
また、「わが家の麺自慢 濃厚ごま香る 汁なし担々麺」も順調に推移している。麺類は競合が多い中で、我々は具材の豊富さを強みに、「わが家の麺自慢 ちゃんぽん」など、満足感に加えて見た目でも楽しめる商品を展開してきた。最近では他社でも具材感のある商品を強化し始めているので、我々としても具材に特徴のある新商品の投入などで、強みを活かせるよう取り組みたい。
〈麺類も順調に推移、今後は健康へのアプローチなども〉
――現在注力している取り組みは。
冷凍食品を通して社会的課題をどう解決していくかが主になる。商品づくりの主なコンセプトとしては「お客様の多様化するニーズに寄り添い、食でウェルネスライフの実現に貢献します。」を掲げており、食卓での冷凍食品の活用頻度をいかに増やすかが課題となる。そのために、個食や惣菜メニューを充実させるなど、多様化するニーズに対応することが大きなポイントになる。
あとは健康へのアプローチだ。弁当惣菜で減塩の取り組みなども進めている。健康を気にされる方は今後より増えると思う。冷凍食品が常備食のように利用されるようになったとき、減塩などの取り組みは必要になると考えている。
単身世帯が急激に増えるなど社会の構造が変わってきている。その際、冷凍食品がそれぞれの悩みにアプローチできていれば、より利用が定着していくのでは。そのためにもCMを放映する、売場でPOPなどを掲示するなどで、少しでも多くのお客様に認知してもらえるような取り組みを進め、将来的にも冷凍食品をより広い場面で利用していただきたい。
〈冷食日報2024年7月11日付〉