【冷凍ポテトの今〈1〉】付加価値提案を継続、オーストラリア産の冷凍野菜投入も検討/シンプロット・ジャパン

小野社長
小野社長

外食市場は回復傾向にあるものの、居酒屋などの業態は依然としてコロナ禍以前の水準を下回る状態にある。冷凍ポテトにおいては原料の高騰なども影響し、値ごろ感のある商品の需要が高まっているという。その中で、シンプロット・ジャパンでは付加価値の高い商品を提案しているほか、流行のクラフトビールに合う商品としての提案なども進めているようだ。小野弘樹社長に聞いた。

――冷凍ポテト市場の現状は。

全体の輸入数量は減少傾向で、特に米国産やEU産の数量が落ち込んでいる。日本では外食市場全体としてはコロナ前の水準に戻っていないほか、米国と欧州でジャガイモの原料価格が高騰していることが影響している。その一方で、中国とインドからの輸入数量は増加傾向にあり、特にインドからの輸入が増えている。米国産の価格と比べると、月による差はあるものの中国産は約25%、インド産は約30%安いため、そちらの産地が選ばれることも少なくない。ただ、米国産の製品は米国農務省(USDA)の定めた規格に基づいて製造して、同じノンコーティングの商品でも、長さやポテトの食感、形状などの質は高い。国によって原料の質に差があるため、当社としては味と品質にこだわる顧客に商品訴求をしていく。また、コーティング商品や、経時変化に強い商品の訴求にも力を入れる。

――貴社の売上は。

8月期決算なのでまだ結果は出ていないが、24年度の売上高は前期比で約10%減、数量は約15%減となる見込み。外食市場の回復が想定よりも遅かったことなどが影響している。ただ、コーティング商品は相応の数量を販売できている。新しい産地の出現で市場の競争はますます激化するだろう。そのため、今後は付加価値製品の提案が弊社にとって重要になると考えている。

――現在力を注いでいる取り組みは。

先ほどの内容と少し重複するが、米国産のポテトの良さを実際に味わってもらうなどして提案している。独自の技術で、40分ほど経っても食感を維持できる『コンクエストデリバリープラス』シリーズや、ひねりのあるユニークな形状の『サイドワインダー』シリーズ、クラフトビールをバッターに使用した『ベントアームエール』シリーズなども訴求していく。付加価値に注目した商品提案を増やしていきたい。

22年1月にオフィスを現在の渋谷に移転し、その際にテストキッチンを新設した。ここはガスと電気の両方で調理できるため、お客様の厨房設備に合わせた試作ができる。

多くの方に来ていただいていて、実際に調理をしてメニューの提案やプレゼンテーションを行っている。冷凍しているときは重さが同じでも、固形度が低いために揚げてみると水分が飛んでしまいスカスカになってしまうものもある。価格が安くても、仕上がりが大きく変わってしまうケースなど、実体験をレクチャーしながら取り組んでいる。

また、新たな柱としてメキシコ産のアボカドも提案している。多くの飲食店では、サラダに乗せる、バーガーの間に挟む、といった使われ方が多い。当社では、メキシコ大使館のメキシコ人公邸シェフをテストキッチンに招いて、実際に調理しながら顧客へ提案をしている。公邸シェフは日本人の知らないアボカドの調理方法を知っているため、現地の味を再現してもらい、さらに、日本風にアレンジをしたらどうなるかなどもその場で試せるようにしている。

――今後の取り組みは。

リージョナル制への移管に伴い、APACの主管オフィス・オーストラリアともやり取りをしており、今後はオーストラリア産の冷凍野菜の市場導入も視野に入れている。一部の展示会で試してもらったところ評判は悪くない。近いうちにテスト販売を実施したい。冷凍ポテト市場は、世界的需要が今後も高まる見通しで、価格は下がりにくいだろう。人口増加が進む中、食の西洋化は世界的にも進んでいる。ポテトの取り合いは激化していくと思うので、生産設備への投資は今後も続け、需要増に応えられる体制を整えていく。

〈冷食日報2024年7月17日付〉

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創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
体裁:
A4判 7~11ページ
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