鮮度保持技術「ZEROCO」、「儲かる」一次産業の仕組みづくりへ、国産冷凍品や生鮮品の輸出も視野に展開

鮮度保持技術「ZEROCO」、「儲かる」一次産業の仕組みづくりへ
鮮度保持技術「ZEROCO」、「儲かる」一次産業の仕組みづくりへ

鮮度保持技術「ZEROCO(ゼロコ)」を持つZEROCO社(東京都渋谷区)は、農業生産法人JAPAN FARM PARTNER社(沖縄県石垣市、以下JFP)と共に、野菜や精肉などの生産者の近くに「ZEROCO」を設置し、食材を長期保存できる環境を構築する。これにより、食料供給の安定化や、第一次産業の従事者が稼げるような仕組みなどを作る。まずは北海道にZEROCOを設置し、生産者が在庫を持てるようにする。年内に8カ所ほどで設置を予定している。将来的には海外輸出も進め、日本が掲げている2025年における農林水産物・食品の輸出目標額2兆円の達成などへの貢献も図る。

8月19日に行われた発表会で、ゼロコ社とJFP社で代表取締役社長を務める楠本修二郎氏は「農業や畜産、漁業などに加え、地方に対してもちゃんとお金が回る仕組みをつくっていければと思う。日本の食の海外の輸出などを目指しながら展開していきたい」と語った。

鮮度保持技術「ゼロコ」は、庫内の温度は約0度で、湿度は100%弱の、低温・高湿の環境を安定的に生み出し、品質を保った状態で食材を長期保存できる。「雪下野菜」からヒントを得た技術で、結露を発生させないことで凍結やカビの発生、腐敗などを防ぎ、長期間食材を保存できるようにしている。冷凍する前の予備冷却や解凍にも活用できる。

2023年は中東のドバイなど3カ所で実証実験を行った。また、能登半島地震が発生した際、能登で獲れた魚を「ゼロコ」で保管し、タイなどに輸出する取り組みをテスト的に行ったところ、現地から良い評価を得られたという。

JPF社は、沖縄・石垣島で経産牛やジャージー牛の牧場の経営や加工食品の製造などを行っている会社だ。今回の両社の取り組みは、第一次産業の抱えている課題を解決すると共に、日本の食を世界に向けてより発信していくための取り組みとして進めている。

日本の食産業は、厳しい状況にあるという。農業従事者においては、農業者の平均年齢は2023年時点で68.7歳と高齢で、従事者は過去20年で半減している。また、高齢者が70%を占め、平均所得は98.2万円と非常に厳しい状況にある。漁業者も厳しい状況で、平均年齢は56.4歳で、人口は過去30年で61%減っている。

背景には生産と同時に腐敗と劣化が進むため、生産者が価格を決定できないという問題がある。価格を自ら決定できず、生産在庫をコントロールできないため、効率性と利便性を追求する既存のサプライチェーンに依存してしまう。そのため、儲からないなどの面から若い世代の参入がほとんど見られない状態にある。さらに、不漁・不作といったリスクなどもあり、従事者の減少に歯止めが利かない状況にある。

そこで、「ゼロコ」を活用して多く獲れた食材を長期保存できるようにすることで、自らの意思で価格を決定できる新しいバリューチェーンを構築し、担い手不足やフードロス、労働環境などの課題解決を目指す。食品の供給量と価格を安定させることで、生産者の立場を改善し、より良い条件で仕事をする機会を提供し、食品産業全体の健全性を向上させる。「ゼロコ」によって豊作時には獲れすぎた分を保存し、不作の際などに在庫を販売することで、供給過剰や市場価格の急落も防げるという。

まずは北海道に約50坪の「ゼロコ」を設置する。生産地が在庫を持てる仕組みの実証実験を8月中に開始するという。今後は年内に同様の取り組みを8カ所ほどで行うようだ。

さらに、生産者や行政、シェフなどとのパートナーシップを構築し、フードロスを減らすだけでなく、保存しておいた素材をいつでも販売できるようにする。将来的には地方の名店や地域で愛されている料理などを産品化するほか、海外への日本食の輸出を進める。そのために、品質をより安定させるべく、リーファーコンテナやトラックの積載などに関する実験も進めているようだ。

〈冷食日報2024年8月20日付〉

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昭和47年(1972年)5月
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