食品工場から飲食店まで広く採用、海外の高級レストランで試食イベントも/プロトン凍結
電磁波や冷風などを用いた特許技術で、食品音細胞破壊を最小限に抑えた急速凍結機「プロトン凍結機」を扱う菱豊フリーズシステムズ(奈良市大宮町)。食品工場などへの提案に加えて、グループ企業の新鮮ネットワーク(東京都中央区)などを通じて冷凍商品の販売も行っている。
「プロトン凍結」は、磁石や電磁波、冷風を組み合わせた技術だ。磁石や電磁波で分子を整列させ、多くの氷核を一度に作り、細胞破壊の原因となる大きな結晶の成長を妨げることで、解凍時のドリップ量を減らせるという。
従来ならば冷凍すると味が落ちてしまう食材や料理も、品質をほとんど損なわず提供できるようになるとの期待から、利用シーンは広がっているようだ。大手食品関連企業などでも採用されているほか、グループで製造している冷凍商品が企業の社食や、リゾートホテル、結婚式場などでも採用されているという。
近年では海外での提案も強めており、スペインの高級レストランで開いた試食イベントで、プロトン凍結機を用いて凍らせた料理を提供したところ、参加者からは驚きの声が上がったようだ。
現在の機械や冷凍商品の販売状況や今後の取り組みなど、新鮮ネットワークの二宮大朗CEOに聞いた。
〈国内外で機械の導入広がる 今後は解凍も含めた提案も〉
――コロナ禍以降の冷凍市場について。
コロナ禍を経て、冷凍食品市場は大きく変化した。スーパーでは取り扱いが大きく広がったほか、飲食店が小型の凍結機を導入して商品の販売も手掛けるようになっている。
大手の食品メーカーが作る冷凍食品や、野菜など備蓄のできる冷凍素材、惣菜製造業として販売する冷凍商品、そして飲食店が手掛ける冷凍商品の認知は、この時期に大きく高まったと感じる。この頃に、凍結機の導入は大きく進んだ。
――昨今の販売状況については。
食品工場など産業向けの提案を強みとしており、そこの注文が着実に伸びた。加えて、飲食店などからの引き合いも増えた。我々はコロナ禍以前から食品工場を作って百貨店向けの冷凍商品の販売や、ミシュランの星を獲得したシェフと共同で製品開発も手掛けてきた。その経験を踏まえた、コンサルティングを含めた製造協力が行えている点も、支持されている要因だと感じる。 また、コロナ禍で冷凍食品の認知が広がったことで、これからは効率面で考えても冷凍になると考える事業者は増えたと感じる。これまで提唱してきたことへの支持と理解を得られたことはやはり大きかった。
――2024年6月、スペインのレストランにて、プロトン凍結機で冷凍された料理などを提供するイベントを行った。参加者の反応は。
レストランの代表者など30名を招いて行ったところ、驚く方が多かった。冷凍の牡蠣を提供すると、本当にこんなに美味しいのかと言われた。海外だと値段は高いが品質的にいまひとつの魚類や貝類が流通している。それをプロトン凍結で流通させることができれば、質を落とさずに安心安全な状態で提供できるようになる。
ヨーロッパは2017年ごろから展開しており、コロナ禍中でも機械の販売は順調だった。導入もさまざまな場所に広がり、メキシコやポーランド、イスラエルなどにも広がっている。
――日本食の輸出も検討しているか。
日本で作った料理を冷凍して輸出するのは可能性があると思っている。日本で1,700円の寿司が、アメリカでは3,400円で売られている、なんてこともある。日本と海外の両面で取り組むことが今後重要になるのでは。海外では和食ブームで、かなり高額のレストランもある。今後人口の減少などで日本の消費は今よりも落ち込むかもしれない。日本で作られた料理を、しっかりとした価格で送り出すことは、前向きな選択肢になるのでは。
アメリカ市場で機器の提案は2年前から行っており、導入は着実に広がっている。もう少しレギュレーションを整理し、国内向けの提案と共に力を注ぎたい。
――凍結機市場の今後をどう見ているか。
人口増加で食料が不足する、という話はよく言われている。冷凍技術が世界的に広がれば、消費期限が短くてダメになっていた食材を長期間保存できるようになり、広く供給できるようになると思っている。凍結によって食料供給のサポートにつながるのでは。
――今後の取り組みは。
現在、25周年プロジェクト「RE:FRESH」を進めている。一次産業(生産者)から、二次産業、三次産業のパートナー企業と連携し、プロトングループがもつノウハウやリソース、ネットワーク、技術を活用しリブランディングするためのサービスプログラムだ。生鮮だけがフレッシュというわけではなく、冷凍ならではのフレッシュさもあるのでは、と考えている。
機器のユーザーの方には、製造の支援だけでなく、販路の支援も行っている。コンサルティングサービスを通じて国内での導入もより広げられればと思う。
解凍機も含めた提案も進めていく。自社で凍結機と解凍機の両方を持っているメーカーはまだ少ない。どんなに良い状態で冷凍しても、解凍方法によって味は変化してしまう。冷凍と共に重要な解凍も、今後はマーケット的にも広がっていると思っている。
今の市況を見ていると、冷凍食品は今後、家庭で日常的な食事の一部になると考えている。そこに向けた提案も行い、機器と商品の両面でアプローチできればと思う。
〈冷食日報2024年9月13日付〉