冷食は売上・数量ともに前年越え、今後は魚惣菜の展開にも注力、「@FROZEN」ではB級グルメなど検討【冷食流通インタビュー〈1〉イオンリテール】

「みんなのおかず」シリーズ
「みんなのおかず」シリーズ

イオンリテールにおける冷凍食品の販売は、売上・数量ともに前年を上回っている。「@FROZEN」も順調に推移しているという。今後は魚商品の拡充や、「@FROZEN」で地域の名産品などの強化も検討しているという。食品本部デイリーフーズ商品部長の青木郁雄氏に聞いた。

青木氏
青木氏

――24年度の販売状況は。

売上と数量ともに比較的顕著に推移し、市場の動向を上回る水準となった。「@FROZEN」の数字も入ってくるが、単価も順調な動きを見せている。

カテゴリー別では、冷凍野菜と冷凍果実はといった素材系は右肩上がりで伸び続けている。果物は最も売れているブルーベリーに限らず全般的に良かった。

ワンプレート商品についても、広がってきていると感じる。プライベートブランド(PB)でも取り組んできたが、ここ1~2年の勢いはすさまじい。ニップンさん、ニチレイさん、ニッスイさんの商品はもちろん、グループの「オリジン弁当」の商品も支持を広げている。売上は1.5倍近い状態で推移し続けている。調理の手間を減らせて、ちゃんとした食事を手軽にとれる点や、単身世帯の増加などで支持を広げているのでは。

弁当惣菜も着実に伸びている。物価高騰の影響による節約志向の表れの一つと捉えている。コロナ禍前は売り上げが落ち込んでいたので、売場を縮小してきたが、ここに来て着実に売り上げを獲れている状況にある。

他にも冷凍野菜などで大容量の商品は支持されている。利用頻度の高いものほど動きは良い。冷凍庫のスペースには限りがあるため、それぞれにとってよく使う、必要なモノを買う傾向が強い。

PBでは、スナックや米飯、麺類が順調だった。さらに、6月に発売した「みんなのおかず」シリーズも好調だ。

――「@FROZEN」の現状は。

好調なので店舗拡大を進めており、売上も着実に伸びている。単価や買い上げ点数も通常の店舗よりも高い水準で動き続けている。通常の売場と専門店で置いている商品は大きく異なるため、「@FROZEN」で売れていても、既存の売場では売れづらい商品もある。「@FROZEN」では5,000円台の商品も置いているが、これは通常の店舗では売れないだろう。

ただ、いなり寿司など、通常店舗でもしっかりと売れる商品も確かにある。スイーツ系も、価格的に手に取ってもらえる商品ならば比較的堅調に推移している。ただ、1,000円を超える商品はまだ売りづらいので、バランスを見ながら取り組みたい。

また、色々と実験的な施策も行っており、「宅麺」の導入もその一つだ。男性だけでなく、女性からも支持されている。

――秋発売の商品で注目の商品は。

王道ではないところではキッシュ。キッシュ自体、決して喫食頻度の高い商品ではないが、女性からの支持は厚く、百貨店の惣菜売り場でも人気は高い。しかし、家庭ではなかなか作る機会がないので、あると嬉しい商品では。

あとは、ニチレイさんの「担々麺」も、汁ありと汁なしに切り替えられる二刀流的な商品で面白い。新商品の投入が活発なワンプレートも期待したいところだ。

――強化したいカテゴリーは。

やはり夕飯で使ってもらえる商品を強めたい。唐揚げや、ハンバーグ、中華系ならば餃子、シュウマイの展開を進める。

また、これからは魚系の商品もより広げたいと思う。冷凍食品において魚系の商品は、品ぞろえの面で他のカテゴリーよりも弱い。魚惣菜を欲しい人は鮮魚売り場に流れてしまう。今、「トップバリュ」ブランドでミールキットや惣菜などさまざまな商品を展開しており、冷凍食品でも美味しい魚惣菜があることを知ってもらえるよう取り組めればと思う。

「@FROZEN」では、B級グルメや名産品の扱いを強められればと思う。自宅にいながら、さまざまな地域の味を楽しめれば、より魅力ある売り場作りにもつながるのでは。「@FROZEN」は、新しい商品を探している方が多い。1か月前と品ぞろえにそこまで違いがないとなると、魅力的に映らなくなってしまうので、新しい発見を提供し続けられるよう、品ぞろえは強化できればと思う。

〈二極化が進んだ先の中間の手当ても〉

――その他、今後強化する取り組みは。

この先、コストが下がることはなかなかないと思うので、高単価な商品と値ごろな商品の二極化はさらに進むと考えている。そのため、メーカー各社も製造する商品の絞り込みを行うのではないかと思っている。一方で、新興メーカーは手作りや、有名店との共同開発など、何らかのこだわりを持った商品を投入するようになるのでは。

ただ、高価格と値ごろな商品が多く出ると、その中間の商品が無くなってしまう。味と価格を両立させた、中間を狙った商品をPBでいつか実現できればと考えている。

また、安心安全面には注意を払って取り組みたい。1つ事故が起きてしまえば、業界全体のイメージダウンにつながりかねない。

我々の場合、PBもそうだが「@FROZEN」で扱う商品でも、精密にチェックをして扱っている。市場全体が盛り上がっているからこそ、安心安全の面にも気を付けていく。

〈冷食日報2024年9月20日付〉

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近年の冷凍食品をめぐる情勢は、共働き世帯の増加や家族構成の変化、また飲食店や量販店の惣菜売場の多様化によって需要が増加しています。一方で、家庭用冷凍食品の大幅値引セールの常態化はもとより、原料の安定的調達や商品の安全管理、環境問題への対応など課題は少なくありません。冷食日報ではこうした業界をめぐるメーカー、卸、そして量販店、外食・中食といった冷凍食品ユーザーの毎日の動きを分かりやすくお伝えします。

創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
体裁:
A4判 7~11ページ
主な読者:
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