無人販売は新時代へ コロナ禍以降にオフィス・地方での導入増加 人手不足など背景に

無人販売が各地で増加中
無人販売が各地で増加中

冷凍餃子の無人販売店や冷凍自販機など、コロナ禍に大きな広がりを見せた無人販売。しかし、新型コロナウイルスの影響が落ち着くとともに、自販機や店舗の撤退も最近では見られるようになった。その一方、オフィスやマンションの共有部、建築現場などで無人販売の引き合いが増えている。 地方での導入も広がりつつあるなど、無人販売に新たな動きが生まれ始めている。

自販機自体の出荷台数は減少傾向にあるという。日本自動販売システム機会工業会の調査によれば、飲料や日用品、両替機なども含めた2024年における自販機の普及台数は、前年比0.5%減の391万300台となった。

その中で、インスタント麺や冷凍食品などを販売できる食品自動販売機は0.2%増の8万1,200台となっている。関係者によると、「冷凍自販機については、コロナ禍中と比べると販売自体は落ち着きつつある」という。

コロナ禍中は、非接触が推奨されていたこともあり、これまでは飲食店の店頭など街中に設置されるケースが多かった。しかし最近では、街中から商業施設内やホテルなどに移りつつあるという。例えば、「変なホテル 東京 羽田」では、世界各国の航空機で提供される人気メニューを楽しめる冷凍自販機などを設置している。「イオンモール幕張新都心」では、冷凍マカロンを購入できる自販機が置かれている。

さらに、オフィスなどのBtoB向けの販売も可能性がより高まっている。リモート勤務と出社を併用する企業も多く、社員食堂はコロナ以前よりも利用する人が減り、撤退が増えている。そのため、代わりに無人販売を導入する企業も現れている。

また、業種や勤務時間によっては食事を買う場所がないこともあるため、従業員向けに無人販売を導入する会社が増えつつあるようだ。

関係者は「ホテルは24時間のサービスが求められるが、人手不足によって対応しきれないこともあるため、従業員向けに無人販売の導入を検討するところが少なくない」と話す。

別の関係者は、「店舗を出店するよりもコストを抑えられるほか、コロナ禍にキャッシュレス決済が浸透したことで、参入障壁は低くなっている」と語る。

◆出社の動機づくりとしての活用も

オフィスでも無人販売機が活用される
オフィスでも無人販売機が活用される

食の福利厚生サービスとして、オフィスに無人販売機を設置して生のサラダなどを販売するKOMPEITO(東京都品川区)。日本各地から届く新鮮野菜を、管理栄養士監修のもとサラダや惣菜にしてオフィスなどへ届けている。福利厚生の一部として採用が進み、企業が費用の一部を負担するため、社員はほとんどの商品を1個100円で購入できる。

元々は都市部のオフィス向けにサービスを展開してきたが、コロナ禍に企業の出社機会が減ったことで、売上は大きく減少。その一方で、別のニーズが顕在化してきたという。

取締役の好岡利香子COOは「コロナ禍では地方の飲食店が中途半端に営業するよりも休業して給付金をもらう方が得という考えからか、多くの店舗は休業状態にあった。そのため、出社しなければならない製造業や建築業、業務の都合でリモートワークを急には導入できなかった企業に勤めている方がランチに困ることも多かったため、そうした企業からのニーズが表出した」と明かす。

また、新型コロナウイルスの影響が薄れてからは、都市部のオフィスでの導入も増えたようだ。「オフィス回帰が始まったことで、オフィスに来てもらうメリット作りのような形で契約される会社も増えた」(好岡COO)という。

今後については、「法人数から考えると、まだ市場をほとんどとれていないのが現状。まずは市場での存在感を高めて、10年以内にマーケットシェアの10%を獲得できれば」と力を込めた。

◆ 自販機メーカーも新たな取り組みを推進

これまで冷凍自販機を扱ってきた企業でも、新しい取り組みを進めている。

コロナ禍に投入した冷凍自販機『ど冷えもん』のヒットで注目を集めたサンデンリテールシステム。新たな取り組みとして、車両であるトレーラーハウスの中に自動販売機を搭載し、無人販売が可能な移動型店舗を提案している。移動できるため、キャンプ場などさまざまな立地の新規出店にコストや時間をかけずに展開できるという。災害時にはそのまま現地に向かい、支援を行うこともできるようだ。また、実物商品を展示でき、デコレーションも自由に行える新たな自販機も訴求している。

富士電機ではロッカー型の冷蔵自販機の提案を進めている。農作物など同じ商品でもサイズが異なる、重量のある商品は通常の自販機では販売が難しかった。また、冷蔵のケーキや果実など衝撃にデリケートな商品は自販機では販売が難しかったという。加えて、個人経営の飲食店では冷凍商品を製造できることも多々あるが、凍結機自体の出荷は減少傾向にあるとの見方から、不定形で重量のある商品など、今まで扱えなかった取り扱いの難しかった商品でも販売できるよう、提案する。

大手チェーン店で実験的に設置したところ、販売は順調だったようだ。担当者は「営業時間外だけでなく、営業時間中でも動きが見られた。新しい売り上げにもなるのでは」と話す。

また、上尾市役所(埼玉県上尾市)では地域で採れた野菜を販売しているほか、将来的にはスーパーやテイクアウト専門店などへのアプローチも視野に入れているようだ。

「ロッカーのタイプの無人販売機はすでにあるが、当社の製品は冷蔵で10度以下の温度にコントロールできる。品質の保持にもつながるのでは」(担当者)と期待を寄せる。

〈冷食日報 4月9日付〉

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昭和47年(1972年)5月
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