ジン「ビーフィーター」蒸溜責任者デズモンド・ペイン氏に聞く

ジン「ビーフィーター」蒸溜責任者 デズモンド・ペイン氏
サントリースピリッツが展開するジン「ビーフィーター」から、マスター・ディスティラー(蒸溜責任者)のデズモンド・ペイン氏が来日した。ペイン氏はジン業界に携わって今年で50年を迎えたジン業界の生きるレジェンドだ。20年以上にわたり「ビーフィーター」のマスター・ディスティラーを務め、創業者ジェームズ・バロー氏のレシピと精神を守り続けている。

――この50年を振り返って

私が業界に入った50年前、ジンは流行遅れなお酒でウォッカのほうがずっとクールだった。でも10年ほど前から、ジンが突然ファッションになった。これにはカクテルの流行も大きく影響している。新世代のバーテンダーが、クリエイティブで革新的なカクテルを生み出すようになったこと。また、世界規模でバーテンダーどうしの交流や情報交換が進み、グローバルにバー文化が進化したことも要因だろう。

――グローバルなカクテルコンペも増えました

「ビーフィーター」でも、バーテンダーとの関係を大切にしている。2011年より、バーテンダーのクリエイティビティを競う「ビーフィーター グローバル バーテンダーコンペティション「MIXLND(ミックスロンドン)」をロンドンで開催。今年は34カ国から2000人以上がエントリーする規模まで拡大した。ロンドン・ドライジンの大手で唯一、ロンドンに蒸溜所を構える「ビーフィーター」だからこそ、ロンドンでの開催に意味がある。

――今、クラフトジンが流行っていますが

クラフトの定義とはなんだろうか? 慣習的に小規模の生産者を指して使われることが多いが、私たちのジンづくりにおける精神は、クラフトだと自負している。ボタニカルを選ぶ時も、たとえばジュニパーなら160ものサンプルの中から「ビーフィーター」にふさわしいものを私が自ら選び、ブレンドして使う。蒸留の過程でヘッドとテールをカットするのも、すべて熟練のスタッフが判断する。ジンコンペティションの審査を任されることも多いが、小規模だから必ずしもいいというわけではない。規模が小さすぎると常に同じクオリティを創り続けることが難しくなる。時代を超えて愛されるバランスの良いジンを創り続けることも大切だ。

〈ジントニックを食中酒に、和食との相性も試してほしい〉

――日本で「ビーフィーター」は、「ジンと肉」=ジントニックを展開し、現在5000店にまで広がっています

ワンダフル! (と破顔)。ジンには、ボタニカル由来のさまざまなフレーバーが溶け込んでいるので、どんな食事にもあわせられるお酒だ。食中酒としての提案は、新鮮でいいね。

――国により飲まれ方の違いはありますか

スペインではかつて、コーラ割が主流だったが、今ではさまざまな種類のジンとトニックウォーターを揃えて、自由に組み合わせを楽しめるバーが増えている。アメリカでは、トニックウォーターが甘すぎるので、「ビーフィーター」用のトニックウォーターを開発したこともある。ブランドとの相互作用で伸長した。ブラジルも今、ジンが大きく伸びている。かつて300c/sだった輸出量が、25,000c/s まで拡大した。中国市場はまだ難しそうだ。

――日本市場に期待することは

「More Gin」(もっとジンを)だね。「もっと、ビーフィーターを」ではなく、ジン市場そのものをまず、大きくしたい。

日本でバーに行くたびに、バーテンダーのクリエイティビティに刺激を受けるんだ。バランスに優れた「ビーフィーター」は、カクテルにも最適で、バーテンダーが使いやすいジンだと思う。ジンはどんな色にも染まるスピリッツだし、食中酒としても楽しめる。特に「ビーフィーター24」には煎茶が入っているから、和食ともぜひ合わせてみてほしい。

〈酒類飲料日報2017年12月13日付より〉