〈インタビュー〉2017年のRTDを振り返る① キリンビールマーケティング部 RTDカテゴリー戦略担当 井本亜香主査
今回、氷結シリーズの記録更新に寄与した新商品「旅する氷結」シリーズについて同社マーケティング部RTDカテゴリー戦略担当の井本亜香主査に商品の戦略と魅力を伺った。
キリンビールマーケティング部 RTDカテゴリー戦略担当 井本亜香主査
――同商品発売の経緯を教えてください。
20代前半を中心とした若年層に「お酒がもたらす楽しい気分」を、「旅することが持つワクワク感」を通じて伝えることができないかと考え、開発された商品。開発は2014年にからスタートしたが、当時は今ほど「氷結」ブランドに元気がなかったため、新しいシリーズを出すのは早いのではないか、と社内で議論になり、その時は発売が見送られた。
2016年に氷結ブランドをリニューアル。東京スカパラダイスオーケストラの「Paradise HasNo Border」を採用し「あたらしくいこう」をキャッチコピーにプロモーションを実行。これによりブランド全体の活性化に成功。このリニューアルとプロモーション策の実施により、これまで40~50代が消費の中心となり「若々しくない」「“お父さん・お母さん”向けのチューハイ」と言うイメージを払拭し、「楽しさ・元気感」や「親近感」「爽快さ」のイメージを訴求することで30代を中心に支持が拡大し、前年に比べ10歳程度ブランドを若返らせることにも成功した。
「消費者が“氷結”に目を向けた、この機を逃すまい」と2017年3月21日に「マンマレモンチーノ」「アップルオレンジサングリア」「カリビアンモヒート」の3種を市場に投入し、発売から3カ月後の6月には1度目の目標の上方修正を、9月には2度目の上方修正を行うほど支持される商品に成長。同商品の価値である「旅することのワクワク感」は若年層に支持され、狙い通り20代前半を中心とした消費者を獲得できた。11月末には2度目の目標修正で設定した170万箱についても達成している。
また、既存顧客からも「自分たちが飲んでいる商品が何か新しい提案を行っている」と好意的に戦略を受け取って頂いている。
――シリーズは現在すべて通年商品と言う、RTDとしては珍しいことです。
開発段階からコンセプトに自信はあったものの、どうしてもそれを表現しようとすると「限定品」っぽく見えてしまうというところがあった。そのため、初年度は一気呵成に通年商品として展開を行い、「たくさんの国」を並べ様々な魅力を提案することで「通年商品」として認知して頂けるよう努めた。12月に発売した「オレンジカウボーイ」を含めて現在8商品をラインナップ。
――そのパッケージについては。
「氷結」シリーズ共通のダイヤカットの缶を採用やデザインが交差する「クロスデザイン」の部分については踏襲。その中に「旅する国」の雰囲気や「そこで飲まれているお酒」とその味のメイン素材の果実を表示することでより商品が持つ「その国を旅する“ワクワク感”」を想起させられるようにしている。
――プロモーションも好評でした。
ターゲットとする若年層の女性から圧倒的な支持を得ている俳優の高橋一生さんを起用し、TVCM では「日本では見かけることが少ないスペインの郷土料理「イカスミのカラマリ」を食しながら「旅する氷結 アップルオレンジサングリア」を飲んでもらったり、インスタグラムにて情報発信。開設当初からフォロワーが30万人を超しニュースになるなど話題となってきた。
プロモーションに高橋一生さんを起用
氷結のプロモーションから「見たことが無い高橋さん」を見せることで、「氷結」ブランドのキャッチコピーである“あたらしくいこう”を効果的にお伝えすることができたことも、若年層の取り込みに成功した一つの要因と考えている。
――最後に一言。
今年は「氷結」ブランド全体が盛り上がり「旅する氷結」も大成功。2006年の最高記録を超えるために苦節11年、やっとその数字を更新することができた。来年についても「Always New」という商品のアイデンティティの下、「氷結」ブランドの魅力を訴求して市場の更なる拡大に努めたい。
〈酒類飲料日報2017年12月25日付より〉