「No.1としてビール市場の改革元年にする」―アサヒビール18年方針
アサヒビールは9日、平野伸一社長、田中晃常務取締役マーケティング本部長らが登壇して、2018年の事業方針を発表した。本年のスローガンは「イノベーションの推進による新たな価値創出でNo.1戦略の深化を目指す!」とし、平野社長は「2026年の税率一本化に向けて、ビールのマーケティングを強化する。リーディングカンパニーとして至上命題だ。ビール市場の改革元年とする」と語った。
平野社長は「昨年は経済が緩やかに回復する中、酒類業界は改正酒税法と4年連続の天候不順で向かい風となった。当社は強みである研究開発・生産技術を活かして新価値を創出し、No.1ブランドの地歩を固めた。主力のビール類は約2%の減だが、市場平均は上回った。スーパードライ30周年で派生商品の“エクストラハード”“瞬冷辛口”、ギフト限定の“ジャパンスペシャル”がいずれも計画を上回った。“瞬冷辛口”は、8月末までの販売を10月まで延長し、118万c/sを販売した。新ジャンルも100.2%と若干だがプラスを達成した。とくに“クリアアサヒ贅沢ゼロ”は計画を上回る510万箱を販売するなどで、新ジャンルNo.1に向けた大きな一歩を記した。イノベーションによる新価値創造で、一定の成果を得られた」と振り返った。
そのうえで18年の方針として「酒類市場は前年並みで推移し、ビール類は2%程度のマイナスだろう。改正酒税法に加え、業務用の一部製品の価格改定がある。当社は強みである研究開発に磨きをかける。特にビールだ。26年にはビール3ジャンルの税率一本化を控え、この4月からはビールの定義変更が行われる。付加価値向上がもっとも重要なテーマになる。市場で3割超の位置を占めるビールの役割りは大きく、No.1である当社にとって至上命題だ。ビールに特化したマーケティングを行っていく」とした。
具体的には「昨年の派生商品はテストマーケティングになり、大きな知見を得た。17年5月に期間限定発売した“スーパードライ 瞬冷辛口”を3月13日に通年販売する。“スーパードライ”とカニバリせず、20~30代の購入意向が高い。購入の時間帯で22時以降が多いというのは、今までにない飲用形態を生み出している。今回、後味の良さとひんやりとした冷涼感をさらに強化した。スーパードライに次ぐ、第2の柱に育成し、今年は200万c/sを計画、ゆくゆくは1,000万c/sブランドにしたい。
次に、酒税法改正によって4月からビールに使用可能となる副原料を活用する技術と、当社の持つ特許技術を掛け合わせた“グランマイルド”を4月17日に発売する。やわらかなコクが続く味わいをゆっくり楽しめるアルコール7%のビールだ。17月9月に発売したクラフトビールの新ブランド「TOKYO 隅田川ブルーイング」は、当社の直営店と東京23区内の飲食店で展開しているが、展開エリアを全国の有力店舗に拡大する。“ペローニ・ナストロ・アズーロ“はじめ欧州ブランドを4月3日に発売する」と述べた。
ビール類以外の酒類については、詳細は追って発表するが、洋酒は、「ブラックニッカ」ブランドが17年に過去最大の360万箱を販売した。RTD については「もぎたて」「ウィルキンソン・ハード」でブランド価値の向上を図るとともに、新ブランドの投入による3つの柱に取り組み、更に活性化を図る。アルコールテイスト清涼飲料は、2017年「ドライゼロ」は過去最大の697万箱を販売した。
〈「瞬冷辛口」 若年層から想定以上の支持〉
田中晃本部長は「瞬冷辛口」と「グランマイルド」について紹介した。3月13日発売の「瞬冷辛口」は「20~30代の若年層で、想定以上にポジションが大きかった。若年層はビールの“穀物臭”“もったり感”を敬遠することが分かっている。それを除去したことが支持された。今回、麦芽比率と発酵度を高めることで、後味の良さを向上させた。また希少ホップ・ポラリスの投入タイミングを最適化することで、冷涼感を向上させた」とした。
4月17日発売の「グランマイルド」は、副原料にハーブの一種であるレモングラスを使用。350ml缶、500ml缶、販売目標150万c/s。麦やアルコール7%の豊かな味わいがありながらも、余分な雑味や甘みを抑えることで、上品でやわらかな余韻とした。自分のペースでじっくり楽しめるスロービールの新提案。「アルコール分が高いビールは、ともすると、時間が経過すると、麦のもったりした不快な臭いと、高アルコールに伴うアルコール臭さが生じる。しかし、ビール定義変更で使用可能となった副原料の活用と、不快な香気を打ち消す香りの成分を麦芽から引き出す技術を掛け合わせることで“やわらかなコク”“アルコール7%”“おいしさの持続”を実現した」と述べた。
〈酒類飲料日報 2018年1月10日付より〉