仏「シャトー・デュ・ムーラン・ナ・ヴァン」当主が来日―ベリー・ブラザーズ&ラッド
2009年よりパリネ家がオーナーとなり、大規模な投資で醸造施設を一新。「グランヴァン」としての名声を確かにし、今では生産量の約半分を輸出する。
エドゥアール氏は、ムーラン・ナ・ヴァンの特長として、「風車に象徴される局地的な強風」と、「1900年代初頭まで稼働していたマンガン鉱山」の2点を挙げた。強い風は病害を防ぎ、ぶどうの成熟を遅らせる。また、ボージョレは基本的に花崗岩土壌だが、ムーラン・ナ・ヴァンの土壌は酸化鉄を多く含むことから、「収量が下がり、味わいも凝縮する」。実際、同シャトーの収量も20~35hl/haと低い。
37haある畑のぶどう樹齢は50~80年。ボージョレでは珍しいゴブレ仕立て。植密度は1haあたり9,000本。テロワールの個性を表現するため、マセラシオン・カルボニックは基本的に行わない。「1980年代から、ボージョレヌーヴォーが市場に出回るようになり、クリュ・ボージョレの地位まで下がったが、近年また復興の流れが見られる。昨年1~9月にクリュ・ボージョレ全体の輸出数量は10%増、金額では16%のプラスとなった」(同氏)。
〈クリュ・ボージョレ「ムーラン・ナ・ヴァン」の真価を伝える〉
会は、複数の畑のぶどうをブレンドすることで「ムーラン・ナ・ヴァン」のアイデンティティを表現した「クーヴァン デ トラン2015」と「ムーラン ナ ヴァン2014」からスタート。「クーヴァン デトラン」の2015ヴィンテージらしい、弾けるように豊潤な味わいに驚かされた。
続いて単一畑シリーズの「クロワ デ ヴェリヤ2014」「シャン ドゥ クール」「ラ ロシェル」をすべて2014ヴィンテージで比較した。標高と土壌は順に、300m の花崗岩土壌、220mの花崗岩+粘土土壌、280m の花崗岩+シリカ土壌。それぞれにくっきりと異なるキャラクターを持つ。「AOC ムーラン・ナ・ヴァンの畑はだいたい標高180~380mに位置するが、標高が高いほど風の影響を受けやすい」。さらに、2014年は強風の日が続き、ぶどうの成熟が遅れたそうだ。一番標高が低く、普段は風の影響を受けにくいという「シャン ド クール」は、文字通り「クール」な印象。しなやかさと凝縮感の心地よいバランス。
最後に登場したわずか0.56haの「特別なクリュ」「クロ ドゥ ロンドル2011」まで、全体的にタイトで凝縮感のある造りなだけに、「熟成のポテンシャルは高く、あと20~25年はおいてほしい」とエドゥアール氏。では「今飲むべきヴィンテージは?」と尋ねると、「2010年と1989年」とのこと。ボージョレにはヌーヴォーのイメージがつきまとうが、ブルゴーニュが高騰する中、クリュ・ボージョレへの関心も高まっている。伝統あるテロワールを誠実に表現する「ムーラン・ナ・ヴァン」の真価を伝えるラインナップだ。
〈酒類飲料日報 2018年2月2日付より〉