JAL エコノミークラス用オリジナルワイン 大橋健一MWと大越基裕ソムリエが開発
フランスのワインメーカーとの共同開発商品で、昨年7月より開発を始め、同社のワインアドバイザーを務める大橋健一MW(マスター・オブ・ワイン)とワインテイスターの大越基裕氏が日本とフランスで、ブレンド作業を行った。ワインのネーミングは、大橋氏、大越氏のイニシャル「O」にちなんだもの。エコノミークラスでオリジナルワインを提供するのは世界でも稀だ。JAL 商品サービス企画本部開発部客室サービスグループの綱島寛哲氏に話を聞いた。
【開発の経緯】
ファーストクラス、ビジネスクラスのワインには、各社が力を入れている。当社では、エコノミークラスのワインも充実させたいとの考えがあり、ワインアドバイザーに就任された大橋MW に相談したところ、「ワインのクオリティを上げるためには、自社ブランドで造るほうが良い」との意見をいただいた。機内で提供するプラスチックボトル入りワインは酸化しやすいため、醸造技術に加えてボトリングの技術が求められる。大橋氏はワインの品質保持において特殊な技術を持つポール・サパン社を推薦。ポール・サパン社とは以前よりワインの調達で縁があったおかげで、スムーズに話が進んだ。
ポール・サパン社の技術力に加え、酒問屋ならではの人脈とMW としての学術的アプローチを併せ持つ大橋MW とソムリエ出身で料理とのマリアージュにも優れた大越氏という二人がタッグを組み、緻密なこだわりを重ねることで、つくりの面でもサービスの面でも互いに補完し合い、最高に理想的な機内ワインが誕生した。
〈緻密な配合で5品種をブレンドした「機上で最もおいしく感じられるワイン」〉
【開発の過程】
最初からフランス産にこだわっていたわけではないが、さまざまな原酒の中からワインを選んだ結果、すべてフランス産のぶどうになった。将来的にも同じ品質を担保して生産できるか、発注ごとに同じブレンドができるかなど、考慮すべき点は多々あったが、ラングドック産ぶどうであれば数年にわたり安定して供給ができる。
ブレンドにあたって考慮したのは機上という特殊な環境において最もおいしく感じられるワインだ。乾燥している機内ではワインも開かず、くっきりとした味わいが感じにくい。騒音は渋み成分を助長させる。エコノミークラスの機内食は、柔らかな食材が多いので、“食感”にあわせたい。結果、白赤共に5種類のぶどうが選ばれた。その配合も緻密に計算されている。
【白ワイン】
グルナッシュ・ブランを中心に、ミッド・パレットに厚みを持たせるためにヴェルメンティーノをブレンドしたほか、さわやかな香りのマスカット、ほのかな苦みを持つヴィオニエも使用。わずかな甘みを加えるためにゲヴェルツトラミネールを1.5%加えたところ、華やかさも加わった。配合は、グルナッシュ・ブラン:56%、マスカット:27.5%、ヴェルメンティーノ:12%、ヴィオニエ:3%、ゲヴェルツトラミネール:1.5%。
【赤ワイン】
フレッシュな果実味で飲みやすいグルナッシュ・ノワールを中心に、ミッド・パレットとして厚みとやわらかさ、細やかなタンニンを持つマルセランをブレンド。シラーから酸味、カリニャンからかすかなドライハーブのフレーヴァーを加え、バランスの良い赤ワインに仕上げた。さらに、マスカットをブレンドすることで、しっかりとボディがありながらさわやかなワインとなった。配合は、グルナッシュ・ノワール:57%、シラー:24%、マルセラン:9%、カリニャン:5%、マスカット:5%。なお、日仏合作の同ワインは、今夏よりスタートした日仏友好160周年を記念する文化芸術イベント「ジャポニスム2018」の広報企画のひとつとして、期間限定で同イベントのロゴ入りラベルで提供される。
〈酒類飲料日報 2018年8月10日付より〉