本格焼酎市場 全体は低調も芋焼酎は微増、業務用で高付加価値商品やハイボール提案など工夫目立つ

芋焼酎「木挽BLUE」(雲海酒造)、麦焼酎「神の河Black」(薩摩酒造)、米焼酎「金しろ」(高橋酒造)
〈メーカー各社が巻き返しに取り組み〉
近年、本格焼酎業界では、芋焼酎の炭酸割りの提案をはじめ、独自の原料や製法、技術を用いたニュータイプの芋焼酎が続々と誕生するなど、各メーカーは需要開拓のための様々な取り組みを進めている。それらは一定の効果も出ているが、本格焼酎市場の不振は続いており、プラスに反転するまでには至っていない。今年も巻き返しを図るため、特徴のある新商品の投入や、新たな取り組みを実施する動きも見られる。

日本酒造組合中央会が発表した2019年1~5月の本格焼酎の出荷数量は、前年比2.6%減の16万2436KLと、マイナス基調で推移している。前年の同期間が7.3%減だったことを考えると復調傾向にはあるが、引き続き、高齢化や若年層のアルコール離れ、RTDの伸長などの影響で、市場全体では低調と言わざるを得ない。

※RTD=Ready To Drink、ふたを開けてすぐ飲める低アルコール飲料

原料別ではさつまいものみ0.3%増で前年超えを維持。麦は4.7%減、米は4.4%減と低迷している。主要県別では、宮崎のみ2.4%増とプラスを維持している。芋焼酎「木挽BLUE」が好調な雲海酒造(宮崎市)の伸長分と、2期連続で前年割れとなったトップメーカー霧島酒造(都城市)の数字が戻ってきているためと推定される。

宮崎に次ぐボリュームの鹿児島は6.5%減となっている。県内の主要メーカーからも、マイナスで推移しているという声が多かった。大分も3.5%減と市場平均並みに低調な推移となっている。

各社の取り組みの中でも、業務用市場の攻め方には工夫がみられる。薩摩酒造(鹿児島県枕崎市)は関西から関東にも販売範囲を広げた業務用限定の麦焼酎「神の河Black」を「神の河」のワンランク上のグレード商品として位置づけ、提案を進めている。今年の春から業務用で展開している長期貯蔵芋焼酎「宵の灯」も好調な滑り出しだ。福岡県内料飲店限定の旨み成分をふんだんに残した無濾過芋焼酎「芋屋波平」も順調で、本格焼酎の登竜門である福岡の通の人に認められ、予想以上の実績となっているという。

高橋酒造(熊本県人吉市)は米焼酎「金しろ」(謹醸しろ)が前年並みを維持し、同じく米焼酎の「銀しろ」(吟麗しろ)がプラスで推移するなど好調であり、「地元熊本で3年前から開始した業務用での金しろハイボール(キンハイ)と銀しろハイボール(ギンハイ)のメニュー化キャンペーンが徐々に浸透してきた」とする。昨年からは福岡でもスタートしている。

雲海酒造は3月から芋焼酎「木挽BLUE」の720ml瓶をラインアップに追加した。サイズや価格帯に選択肢が増えたことで、ナイト系店舗などへの提案の幅が拡がると期待を寄せる。