宝酒造「松竹梅白壁蔵“澪”」新商品発表、イチゴやバナナ香る「一果」などで若年層の飲用シーン拡大図る
宝酒造伏見工場、ボトリングライン
清水部長は、「2011年当時清酒市場が縮小傾向となり、新ユーザーに手に取ってもらうことが課題だった。そこで若年層に注目したところ、若年層は低アル・甘口を好む傾向が強まっていること、従来の日本酒はその真逆であることが分かった」と、“澪”を開発した背景を語った。
宝酒造酒類事業本部商品部長・清水隆広氏
同社は同商品の着実な育成を図るべく、発売当初は百貨店と通販ルートで限定発売し、売場づくりも工夫した。その後、女優の杏さんを起用した新しい日本酒の世界観の訴求、「澪パ」の提案などによる飲用機会の創出、SNSや公式アカウントを通じた情報発信といったプロモーションが奏功し、2015年にはスパークリング清酒市場は3,765KLまで伸長、今では同商品が同市場シェア80%以上を占めるまでに成長した。同商品が支持を集めた6つのポイントとして同氏は、「まねのできない味わい」「日本酒へのこだわり」「スタイリッシュなボトル」「覚えやすいネーミング」「ちょうどよい価格」「常温流通・長い賞味期限」を挙げる。
一方で「2015年以降は、スパークリング清酒市場全体は縮小傾向にある」と懸念を示しながらも、「ワイン市場における発泡性の構成比は14.3%であるのに比べて清酒市場に発泡性は1.7%に留まる。また、“澪”の認知率は50%であるにも関わらず飲用経験率は27%。まだまだ拡大の余地がある」と強調した。
拡大戦略のひとつ「飲用シーンを拡大する新商品」に関しては、「飲みやすく甘口で香り高い味わい、フルーティーで飲みやすいお酒」を支持する傾向にある20~30歳代の若年層に向けて、新商品「松竹梅白壁蔵澪“一果”イチゴのような香りのスパークリング清酒」「同 バナナのような香りのスパークリング清酒」(210ml、参考小売価格税別310円、アルコール度数4%)を3月10日から発売する。米と米麹を原料に、酵母の力だけで果実のような香りを実現した商品で、SNSやインフルエンサーを通じて若年層を中心に話題性を喚起する。
「新しい飲み方提案商品」については、「松竹梅白壁蔵“澪”〈FROZEN〉」(100mlパウチ、参考小売価格税別180円、アルコール度数5%)を3月10日から業務用で先行発売、4月21日から全ルートで発売する。先行事例では、温浴施設など居酒屋以外でも採用されており、「ユーザーの拡大に期待できる」としている。
既存の「松竹梅白壁蔵“澪”」「同〈DRY〉」は、「フルーティーな香りと味わい」を強化した酒質へとリニューアルした。「澪」はマスカットのような香り、「澪〈DRY〉」はリンゴのような香りを際立たせた。
インバウンド対応では、ラベル裏面の英語の商品説明、翻訳アプリやQRトランスレーターの活用などで、スパークリング清酒を世界に向けて情報発信する。清水部長は、「多層的な商品展開と情報発信でスパークリング清酒を拡大し、No.1メーカーとして清酒市場全体を活性化していきたい」と意気込みを語った。
〈酒類飲料日報2020年2月21日付〉