本格焼酎を楽しむシーンに広がり、多様な飲用スタイルの提案も

巣ごもり需要でパック商品が伸長した本格焼酎
日本酒造組合中央会が発表した本格焼酎の1〜5月累計の出荷数量は、4.9%減で推移している。県別でプラスを維持したのは宮崎のみで、市場のダウントレンドが続いている。

一方で、「家飲み需要の増加を背景に、家庭の日常酒として本格焼酎が飲まれる鹿児島をはじめ南九州エリアでは、量販店でのパック商材が伸びを見せた」(本坊酒造)というように、外出自粛を余儀なくされる状況下でも、本格焼酎の根強い需要があることが伺われる。

また、各社が取り組んできた従来の販促活動に加え、ブランドサイトなどを活用した飲み方提案が奏功し、近年、炭酸割りなど多様な飲用スタイルが受け入れられている。

本格焼酎が楽しまれるシーンも広がりを見せている。今年2月、国内外でバーの開発・運営を行うSGマネジメントとメーカー三社が共同で、統一ブランド「The SG Shochu」を立ち上げた。国内バーシーンでの展開が本格始動し、海外市場でも“Shochu”が認知される足掛かりとなりそうだ。

〈巣ごもり需要でパック伸長〉
本格焼酎メーカーに新型コロナウイルスの影響が出始めた時期は「3月頃」「4月以降」と多少のばらつきがあるものの、「業務用を中心とする瓶商材や付加価値商材の売上に響いた」「家飲み需要の高まりでパック商品は好調」といった声が概ね共通して聞かれた。

〈炭酸割りが浸透〉
霧島酒造は6月、年2回の数量限定出荷だった「茜霧島」の通年販売を開始した。推奨する飲み方は炭酸割り「茜ッキリボール」だ。同商品のブランドサイトを設け、他のアレンジレシピも併せて紹介している。

霧島酒造「茜霧島」ブランドサイト

霧島酒造「茜霧島」ブランドサイト

 
高橋酒造もブランドサイトで「白岳KAORUハイボールのおいしい作り方」と題した動画を発信し、家庭で気軽に焼酎の炭酸割りを楽しむことを訴求している。同社は6年程前から業務用に、「白岳 謹醸しろ(金しろ)」「白岳 吟麗しろ(銀しろ)」を用いた「金しろ/銀しろハイボール」の提案を行っており、炭酸割りが浸透してきた実感があるという。このほど家庭でも気軽に楽しめる缶商品「金しろハイボール キンハイ」「銀しろハイボール ギンハイ」を発売した。
 

 

高橋酒造「白岳KAORU」ブランドサイト

高橋酒造「白岳KAORU」ブランドサイト

 
薩摩酒造は昨年から今年にかけてCVSの留型として、「さつま白波ハイボール」「さくら白波ハイボール」「琥珀の夢ハイボール」の3種類のハイボールを発売した。「素直に本格焼酎の炭酸割りという味を目指した」という同商品をきっかけに、RTDを入り口とした本格焼酎の愛飲者拡大を狙う。
 

 

薩摩酒造「さつま白波ハイボール」「さくら白波ハイボール」「琥珀の夢ハイボール」

薩摩酒造「さつま白波ハイボール」「さくら白波ハイボール」「琥珀の夢ハイボール」

 
〈バー業態にも広がり見せる〉
本格焼酎を楽しむシーン拡大の動きも見られる。三和酒類の「TUMUGI」は、麹ベースの“WAPIRITS”としてバー業態で既に一定の認知を獲得している。
 
同社と薩摩酒造、高橋酒造の三社は、国内外でバーの開発・運営を行うSGマネジメントと共同で2月14日、本格焼酎の統一ブランド「The SG Shochu」を立ち上げた。商品名には「KOME」(高橋酒造)、「MUGI」(三和酒類)、「IMO」(薩摩酒造)とローマ字表記を用いることで、本格焼酎の海外展開も見据えている。
 

(左)三和酒類「TUMUGI」(右)「The SG Shochu KOME」「同 IMO」「同 MUGI」

(左)三和酒類「TUMUGI」(右)「The SG Shochu KOME」「同 IMO」「同 MUGI」

 
「本格焼酎を割って提供するスタイルは、海外では馴染みがない。世界の基準に合わせた提供をすることは大きな前進」(薩摩酒造)と、バー業態での展開が海外市場を切り拓くための鍵となることを期待する。
 
「国内で先行発売を行ったが、既にバー業界では話題喚起ができており、国内でも本格焼酎の捉えられ方に変化が出てきている」(同社)「地元のオーセンティックバーなどで、KOMEだけでなくシリーズ3品全て取り揃えてもらっている」(高橋酒造)など、早くも手応えを感じている様子がうかがえる。
 
◆霧島酒造「茜霧島」ブランドサイト
https://www.kirishima.co.jp/brand/akane-kirishima/

 
◆髙橋酒造「白岳KAORU」ブランドサイト
https://www.hakutake.co.jp/KAORU/

 
〈食品産業新聞 2020年7月13日付より〉