「こうじ菌を使った日本の“伝統的酒造り”」登録無形文化財に登録認定
「伝統的酒造り」は、近代科学が成立・普及する前から造り手の経験の蓄積によって築き上げられてきた手作業のわざを指す。明治以降、文明の進化によって酒の生産は機械化及び大規模化が進行してきたものの、伝統的に培われてきた手作業による生産は、今日まで受け継がれており、日本酒、本格焼酎・泡盛及び本みりんなどの酒造りに活かされている。
また、酒の歴史をさかのぼると、奈良時代の『播磨国風土期」において大神に捧げた供御(くご)から生じた米こうじによって酒造りが行われたことが最初の記録とされている。
室町時代には、日本特有のバラこうじを用いた製法が確立し、焼酎や泡盛などの蒸留酒も登場、江戸時代には冬季生産に特化した「寒造り」が定着するなど製法の洗練が進み、昭和中期には精米歩合の向上に対応した水分調整の技が加わることで、酒造りの更なる発展を遂げた。酒造りの担い手は、歴史的に培われてきたこの巧緻な技を用い、味や香りなどに関する多様な表現を行っている。
〈世界遺産登録への機運向上に期待〉
今回の登録認定について、「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」の小西新右衛門会長は以下のようにコメントを発表している。
小西会長=日本酒、本格焼酎・泡盛、本みりん等の酒造りの技術は、日本の恵まれた気候風土によって育まれたこうじ菌を使う独特の技術であり、我が国が誇る文化と言える。私どもは、こうじ菌を使った酒造り技術が登録無形文化財として登録されるよう、文化庁に要望してきたので、このたびの認定を大変うれしく思っている。
登録を機に、私ども保存会は、我が国の文化として認められたこの技術を、次の世代へ確実に継承するとともに更に向上させていく。また、海外でもこうじ菌を使った酒造りについてPRを行いたいと考えている。
さらに、政府の成長戦略フォローアップ(令和3年6月18日閣議決定)では「日本酒、本格焼酎・泡盛などの文化資源について、ユネスコ無形文化遺産への登録を目指す。」とされており、この度の登録無形文化財への登録によってユネスコ無形文化遺産への登録への機運がさらに高まることを期待している。
〈酒類飲料日報2021年10月18日付〉