日本ソムリエ協会「ウクライナワイン」セミナー開催、ウクライナ人道支援の取り組みで
田崎氏は冒頭、「協会らしいスタイルでウクライナを支援したいと、ウクライナワインを購入し、全国の例会終了後にブース出展。ウクライナワインを知ってもらうことで、間接的でも継続的に経済支援ができる。また、この一環として、横浜市がオデーサ市と姉妹都市の神奈川と東京で、ウクライナワインのセミナーを実施。23日にはZOOMでもセミナーを配信する」と説明した。
ヴァシナ氏は来日16年で日本語も流暢。ワイン輸入は8カ月前に開始した。ウクライナについて、「国名の由来は古東スラヴ語の“国境の地”。緯度はフランスとほぼ同じ。ヨーロッパ内全耕作可能地の3分の1を占める穀倉地帯であり、ソ連最大の工業地帯でもあった。天然資源も豊富でITも注目されている。歴史を振り返ると、1985年のゴルバチョフによるペレストロイカが大きな転換期。83年からの禁酒政策でぶどう畑の多くが焼却されたが、1989年8月に独立を宣言、1991年ソ連から独立し、欧州産ぶどうの栽培が進んだ。東欧に位置するが、温帯大陸性に属し、クリミア半島の一部は亜熱帯」と紹介した。
〈紀元前から続くワイン文化、欧州系品種中心に高品質なワインを生産〉
ワイン産地は、トランスドニストリアン地区(モルドバとの国境を流れる川沿いに広がる)、オデーサ地区(最南部の一部)、南西(草原)部(オデーサ地区以外のオデーサを含む南部の一番広いゾーン。リースリングに定評あり)、ドニプロ川下流(砂浜)地区(ウクライナの中心を流れるドニプロ川の下流。カベルネが有名)、アゾフ地区(クリミア半島からアゾフ海の北海岸沿い。バーチと呼ばれるマスカットシャスラのテーブルワインが有名)、イズマイール地区(クリミア半島の入り口。暑さは控えめで北の丘陵部はスパークリングワインやテーブルワイン、平坦な中央部は砂地にあり、唯一の原産地呼称「シャボー」が有名)、ザカルバッチャ地区(カルパッチャ山脈の南斜面にあり、栽培適地として注目されている)。クリミア地区(亜熱帯性気候でデザートワインの産地)がある。
同国でワイン文化が発祥したのは紀元前4世紀とされるが、「周辺国を考えると4000~5000年の歴史はあると想像できる」(田崎氏)。北部では11世紀に修道士がワイン造りを開始。1820年にはヤルタ近郊に初の大規模ワイナリー設立。1828年にはぶどう栽培研究機関マガラッチ設立。また、1897年に作られたワインセラー(マッサンドラ)は世界最大規模でギネスにも登録されている。日本でもオークションがあったが、大半が甘口ワインのコレクションだった。
セミナーの試飲ワインは、砂地のシャボー地区で育ったウクライナの土着品種テルティ・クルックを使った「シャボー テルティ・クルック」(3080円)、ウクライナ南部の肥沃な土壌のリースリングで造られる「ツルベツコイ ナッドニプリヤンスキ」(4400円)、オデーサ地区で発酵温度を26度以下に抑えて造る「アッケルマン サぺラヴィ プレミアム」(2200円)、スロヴァキアやハンガリーと国境を接したザカルパッチャ地区にあるワイナリーの「スタホフスキー メルロー エース」(4290円)、最南部へルソンで造られる「ツルベツコイ ピノ・ノワール リミテッド」(8470円)、デザートワイン「チザイ トロイヤンダ・カルパット」(3960円)で、いずれもインポーターはヘルムズ Vino Pioner。田崎氏のテイスティングコメントと共に、ヴァシナ氏がワインとあわせたいウクライナ料理なども紹介した。
セミナーで試飲として提供されたワイン/東京例会セミナー「ウクライナワイン」
〈酒類飲料日報2022年5月20日付〉