ビール大手 ビール回帰、開発を強化
今年の第1四半期はビール類の新製品が多い。CVS限定や期間限定も入れれば17商品になる。昨年は消費増税前で、各社、定番商品の強化に注力したので、新製品が少なかったことの裏とはいえる。しかし一昨年も7商品であり、例年に比べてもその多さが際立っている。しかも、そのうち12商品が、新ジャンルではなく本格的味わいを前面に出したビールだということが特徴だ。これまでもネット販売などで特別なビールを販売していたが、クラフトビール事業も本格化させる。
大手ビールメーカーのビールへの「回帰」が、クラフトビールの人気という流れと合流している。クラフトビール事業を本格化させるキリンビールの布施孝之社長は、ビールの取組み強化の背景として「消費者の価値観の変化」と「将来的に酒税の一本化が見込まれること」の2点をあげる。
同社は4月に代官山と横浜にブルワリーパブ「スプリングバレーブルワリー」を開業する。製造体験などを通じて、新しいビール文化を広める。
また、キリンビールは全国9工場で限定醸造した「一番搾り」のご当地版を販売する。キリンビール横田乃里也生産部長の一言が非常に印象的だ。「これまで醸造家というものは、工場間の差を無くすことが使命だったといっていい。均質な味わいが求められる。今回、一番搾りらしさを保ちつつ、そのエリアの消費者の好みに合った味わいを指示した。醸造家である私自身が、うらやましい」と苦笑まじりに語った。ビールの時代が動いていることを実感する。
サッポロビールもクラフトビールを「新しいビジネスモデルを通じて発売する」(同社)。18日に事業発表を行う予定だ。
一方で、「クラフトビールの定義があいまいだ」と語るのはサントリービールの水谷徹社長だ。「もちろん、幅広い味わいというニーズに対応した商品は出す。しかし、小規模生産者による芸術的なビール造り、という意味ならばクラフトビールとは一線を画す。独立会社をつくっての展開は想定していない。当社はもともと、クラフトマンシップを発揮してビール造りを行ってきたし、ザ・プレミアム・モルツ自体がまさにそういう製品であると自負を持っている」との指摘にも深く頷かされる。
いずれにせよ、大小規模問わず、本格的かつ味わいの幅の広いビールを提案してもらうことは市場を大きく強くしてくれるに違いない。日本のビール文化が新しい段階に移行するのかどうか、注目される。