新食感の凍らせて飲む日本酒、新しい飲用スタイルに注目

冷蔵庫でシャーベット状に凍らせ、手で揉みほぐしながらシャリシャリの食感を楽しむ。清酒メーカーが昨年から提案を行っている小容量パウチ商品は、日本酒の新しい飲用スタイルとして注目を集める。先行したのは大関で、昨年は同じ凍らせて楽しむお酒を投入した黄桜とタッグを組んでの売り場づくりを進めた。凍らせることを全面的に押し出してはいないが、宝酒造もスパウト付で小容量の「松竹梅ポケットパウチ」(180ml)をラインアップしている。今年に入ってからは、白鶴酒造と菊正宗酒造が新たに参入したことでカテゴリーも賑わい、sM(食品スーパー)の店頭においても、複数の商品が並んでいる光景を目にする。

大関が昨年3月に発売した「凍らせ冷酒」と「凍らせ梅酒」は前期、計画比の114%増となる6000万円を売上げた。なめらかな舌触りになるようにアルコール度数や配合を調整しているようで、今年2月には酒質のリニューアルを実施。容量も180mlから手軽かつスリムな150mlに変更し、参考小売価格は260円から220円税別と手頃な価格設定にした。 黄桜は昨年5月、「お酒のシャーベット シャリッと」(180ml)シリーズを発売した。「純米吟醸」、「いちご」、「マンゴー」の3種類をラインアップする。計画を達成するなど好調だったため、期間限定から通年商品に切り替えた。特にスイーツのような味わいが楽しめ、牛乳割りも推奨しているマンゴーといちごが好調だという。この2品は8日、話題の希少糖を含むレアシュガースウィートを加えてリニューアル発売している。

他カテゴリーでもキリンビールが昨年、期間・販売エリア限定で150mlスパウトパウチの「キリン氷結アイススムージー」を発売した。販売数量は2万5000ケース(250ml×24本換算)に上り、風呂上りや食後、アウトドアなど、缶の「氷結」とは異なるシーンで楽しまれたという。「昨年好調だったので本格展開する」(同社)としており、30日から昨年のシチリア産レモンとライチにパイナップルを加えて販売エリアも全国に拡大。コンビニエンスストアや一部球場、イベント会場などで発売し、7万5000ケースを計画している。

今年は新たに白鶴酒造と菊正宗酒造が参入している。白鶴酒造は3月20日、160mlパウチ容器を採用した「白鶴 フローズン純米酒」と「同 フローズン柚子酒」を発売した。「定番よりはスポット的な採用が多く、これから入っていく予定。話題性はあり問い合わせも多い」(同社)。夏場向けの商品ということもあり、今後の伸長に期待を寄せている。

菊正宗酒造は1日から夏季限定で、凍らせて飲むお酒「すだち氷酒 150mlパウチ詰」を発売した。既存の「すだち冷酒」のフレーバーをシャリシャリ食感で楽しめることを訴求する。「すだち冷酒」は、辛口の日本酒に徳島県産すだち果汁をプレミックスした新感覚の冷酒で、前期は1・8Lが3倍に、900mlも2倍に伸長した好評のシリーズである。

ただ、卸筋からは「話題性がありシーズン的に売れるとは思うが、マーケットに定着する商品になるかどうか。毎日の晩酌では飲まない。パーティー需要やおもてなし需要に限定される」といった厳しい見方もあるが、これまでにない商品として新規ユーザーの獲得につながる可能性は十分にありそうだ。