インタビュー アサヒビール社長・小路明善氏 「競争と協調」を新しい段階へ、グローバル市場に打って出る時
–中期的に酒類業界はどうあるべきでしょうか。
小路 次の10年、20年を想定すれば、私は2つの大きなテーマがあると思う。まずひとつは「競争と協調」という視点を明確にして事業を進めることだ。ビール大手4社は、すでに共同物流やパレット共通化などは進めているが、それを一歩も二歩も進めて、原料調達、缶や段ボールなどの包材、ガスボンベや樽容器などの資材の一本化に取り組み、コストダウンを図るべきだ。サプライヤーだけでなく流通のコスト削減にもつながる。当社も一昨年から缶容器を他社と共通化しているが、「協調」を次のステージに移す時だ。
酒類市場はこの10年間、1%くらいづつ、減少してきた。これからの10年も、良くて前年並みの状況が続くだろう。条件販売などでシェアを上げても「利益が出ない」というのでは「疲弊」の二文字に向けてまっしぐらに進んでいるとしか言いようがない。「協調」はトップが意識することだし、またトップダウンでしか実現できないことでもある。事業方針のなかに入れていくべきだ。そういう、時代の転換点に来ていると思う。結果、原資を確保して、それを商品開発、設備投資、海外への事業投資などにまわすべきだ。背景として、例えばアンハイザー・ブッシュ・インベブ社は世界のビールの5分の1くらいのシェアを持っているが、これは麦芽・ホップなどの原材料の5分の1を押さえている、ということになる。ビール4社は、麦芽もホップもその9割は輸入に頼っている。原材料費が上がっているなか、将来的に安定的に原料を確保することは喫緊の課題だ。将来的には契約栽培や、原料地の農家への資本参加なども視野に入れる必要がある。
また、物流コストも今後、上がっていくことは避けられない。いわば「水」を運んでいる我々は「協調」していかないと、コスト的に耐えられなくなる。
(以下、本紙にて)