チリワインが急拡大 仏を抜き、輸入ワイン首位に

国際ブドウ・ワイン機構(OIV)の推計によると、イタリアのワイン生産量は今年、前年比10%増となり、フランスを上回る見通しだ。日本でも今年は、イタリアのミドルレンジを拡充する動きが活発だ。

抜かれたのは生産量だけではない。日本市場では長年にわたり圧倒的トップだったフランスだが、今年はチリワインが急拡大。最新の通関(9月)でも、単月で3割増となったチリが累計でもトップを走る。ボジョレーヌーヴォーを考慮しても、年間累計ではチリがフランスを上回りそうだ。

トップブランドのアサヒ「アルパカ」は今年、輸入ブランドでは最大規模となる90万c/sを予定。9月にはスパークリングワインを投入し、さらなる拡大を狙う。メルシャンも7月に同価格帯で動物のキャラクターを配した「プードゥ」を投入。初動は「予想以上の動き」で、年内も目標数を上回るとみる。サントリーも9月に「サンタ」を投入。「サンタカロリーナ」ブランド全体で前年比2.5倍を見込むなど、売り場では「動物」たちのシェア争いが激化している。

チリワインはなぜ、ここまでシェアを広げたのだろうか? 第一に考えられるのは、その「わかりやすさ」だ。円高時に普及した安旨ワインのおかげで、消費者は価格と品種から肌感覚で味わいを判断できるようになった。同じ価格帯でも、品種や味わいに幅のあるヨーロッパ産と違い、ぶどうの品質も味わいも安定し、日本人が苦手な渋みや酸味が少なく、だれが飲んでも普通においしい。ワンコインから購入でき、スーパーからコンビニまで接点が大きいのも強みだ。ある意味、ビールと同じ感覚で楽しまれているのだろう。

生活防衛層から絶大な支持を受けるチリワインだが、一方で、ただ安いだけのワインに飽きている層も増えている。スマイルの「コノスル」が、10年以上にわたり前年増を続けているのは、ブランドとして定着したからだけではなく、品種のバラエティと価格帯、つまり「横」と「縦」のラインを意識して広げてきたことも大きいだろう。

メルシャンも、価格帯の違う5つのチリワインブランドを展開するが、「カニバリはほとんどない。チリワインの市場自体が広がっている」という。今年はハロウィンにあわせて「カッシェロ・デル・ディアブロ」のアンテナショップを初めてオープン。今後も継続して、上位ブランドへのシフト提案を進める。

チリワインはすっかり市場に定着した。今後は、品種の幅だけでなく、オーガニックやシングルヴィンヤード、上級ブランドなど、飲み手を育てる提案も必要だろう。