焼酎の魅力、もっと発信を 万能ゆえの分かりにくさ

▽原料個々の話題は多数

焼酎は多様である。楽しみ方も原料も、乙類もあれば甲類もある。そのため、わかりにくいといわれ、海外での訴求にも苦労している。いまや完全に清酒に話題を牛耳られているが、魅力が落ちたわけではない。万能ゆえに一口に説明するのが難しいのだ。

市場をみると安定した需要はある。「11月1日・本格焼酎・泡盛の日」も確実に進展はしている。ただ、総じて人口減、飲酒人口の高齢化、酒類の多様化などでダウントレンドは否めない。全体がその状況下ながら増収を続けているのが№1企業の霧島酒造で「独り勝ち」といわれて久しい。

原料個々に話題はある。芋は赤芋や紫芋など希少な原料をつかった商品が動いている。麦は長期熟成商品が話題に上り、米はハイボール提案や日本人の基本であるお米を強調した訴求もみられる。そばは雲海酒造の「そば&ソーダ」が爆発的に広がっている。CMキャラクターの女優・吉田羊さんが露出を高めており、ゴールデン番組で雲海の一升瓶を持って飲み歩くという大きな販促の効果もあった。

多くみられる「ハイボール提案」は昔ながらの飲み方ではあるが、各原料の味わいの違いもわかって、芋では特に缶チューハイの世界で広がりを見せている。200ml、500mlペットなどの小容量がコンビニを中心に入り、12度や20度といった度数を違えた提案も根付いている。卸を中心に1000本、2000本といった小ロットで造りを厳選した限定商品の提案も好調というから、焼酎ファンは新たな提案を確実に待っている。

どうしても同じ和酒として、清酒と比べてしまうが、地酒がブームといわれるほど若年層、女性層にまで広まっているのは全国の若い蔵元が自ら求める酒質を追求し完成させたことでもある。そして最近ではネットなどでこれまで日本酒に関係の無かった若者までもがその魅力を発信し、試飲イベントには多数の女性や若者が詰めかける現象が起きている。

焼酎は生産地が九州に限られるだけに都市部での網羅的な発信は難しいかもしれないが、これまでのカタチに捉われず、魅力的な提案ができれば、年齢層関係なく、焼酎の世界が伝わるはずだ。清酒にも大躍進したラグビー日本代表にも長い潜伏期間があった。その間、修練だけは欠かさなければ、先に開く未来がある。何度もブームを起こしてきた焼酎業界には愚の提言だろうが、危機感を抱き始めた焼酎はこれから面白くなる。