飲料市場 エリアマーケティング加速、差別化とブランド活性化狙う
昨年あたりから、飲料市場でエリアマーケティングから生まれた商品が規模は小さいものの目立っている。これは、特定エリアの素材を使うことで、そのエリアの生産者や流通、そして生活者に喜んでもらい、ブランドや企業のファンを増やす施策である。大手メーカーは販売規模が非常に大きいため、全国展開の定番商品にするには原材料の量が足りず、期間やエリア限定などの販売手法を取っており、既存ブランドの活性化の位置づけで取り組むケースが多い。一方、販売量が大手ほど多くないメーカーでは、特定エリアの希少な素材を使用することを差別化ポイントと捉え、付加価値のあるブランドとして展開している。個性と地域密着感で、価格に頼らない営業活動にもつながるため、今後さらに注目されそうだ。
エリアマーケティングがここ最近注目されているのは、セブン‐イレブンジャパンがおでんの味を全国7エリアごとに分けるなど、流通がエリアの特性に合った商品を積極展開するようになったことが一因だ。アルコールではキリンビールが「47都道府県の一番搾り」を今年5月から発売し、話題となっている。清涼飲料では、商品からのニュースとしてブランドの活性化につながると考えられており、期間限定やエリア限定の形で展開されている。
飲料各社の取り組みを見ると、サントリー食品インターナショナルは、昨年9月にエリア・期間限定のご当地ブレンドの「ボス レインボーマウンテンブレンド」7品を展開し、注目を集めた。そのねらいとして同社は、「柱の戦略ではないが、〝ボス〟ブランドのエクイエティ(本質価値)を上げていくためのひとつの手段だった。お客様の心に響く展開を考えた」とする。
CsV(共通価値の創造)にグループとして取り組むキリンビバレッジは、昨年7月に〝おいしく地産全笑。プロジェクト〟を開始。今年は東北6県の果実を使用した「小岩井 東北のおいしい果実Sparkling」を7月12日より期間限定で全国発売した。「午後の紅茶」でも、特定エリアの素材を使った新商品を次々と発売している。「地域のコミュニティとどのようにつながるかという目的も入っている。素材を使うことでその地域の方に喜んでいただき、それを全国の人にも味わっていただきたい」(キリンビバレッジ)とねらいを話す。
アサヒ飲料は、「十六茶」で〝ご当地素材ブレンド〟を全国7地域で今年6月に数量限定発売した。「ご当地素材の限定品とともに、十六茶本体も陳列していただくお店が多く、本体の企画頻度が上がった。ブランド活性化にとって意味があった」(アサヒ飲料)と語る。
一方、ポッカサッポロフード&ビバレッジは、昨年発売した国産希少素材を使用した無糖茶が好調で、今年3月には「富良野ラベンダーティー」「有機にっぽん烏龍」「東京緑茶」を開発。産地にこだわった茶葉を商品化することで各地の素材の魅力を発信する。同社は「日本の農業を応援するという理念のもと、小さくてもきらりと光る個性を作りたい。当社しか提供できない価値を目指す」とする。
ネット通販が普及する中で、エリア別のマーケティングが効果的かどうかは商材によって異なるだろう。しかし、個性が発揮でき、価格に頼らない提案がしやすいため、多くのメーカーの営業担当者や該当エリアの流通担当者から好評だ。フレーバー展開など、単純な新商品では手売りチャネルで採用されにくい傾向にある飲料市場において、地域と流通と生活者、そして自社の営業まで元気にするエリアマーケティングの商品は、主流にはならないものの、ブランド活性化のきっかけ作りや、付加価値付けに今後も活用されそうだ。