今年の市場を振り返る③ ワイン-伸び率鈍化、低価格化も顕著に

2009年以来、拡大を続けてきたワイン市場だが、2016年は停滞感が否めない。国税庁の課税数量では最新の9月までで、前年を4%下回る数字となった。

輸入通関実績を見ても、2L以下のボトルワインは7月から10月まで4カ月連続の2ケタ減だ。デイリーワインのビッグブランドが日本瓶詰になったことも一因だが、バルクワインと2L以下のボトルワインを総計しても、前年比5%減。金額ベースで13%もの減少となった。ボトルワインを見ると、ボリュームの大きなデイリーワインブランドが統計から抜けたにも関わらずCIF単価は599円から563円に低下。市場全体の低価格化が顕著に表れている。

昨年フランスワインを抜いて初めてトップに立ったチリにしても、数量では最大ボリュームながら、昨年ほどの勢いは見られない。ボトルとバルクを合わせても、伸び率は2%にとどまった。

景気が低迷する中、低価格でわかりやすく飲みやすいチリワインが、ワイン市場の日常化・大衆化に貢献したのは確かだが、市場全体の広がりにつながったわけではない。ワインの買い場が広がる中、価格訴求が先走り、大手ビール会社の「家飲みワイン」が伸長。一方、浮遊層や料飲店はハイボールやクラフトビールに流れ、新しいユーザーが取り込めていないのが現状だ。

ボジョレー・ヌーヴォーも今年はあまりぱっとしなかった。サントリー「ジョルジュ・デュブッフ」、アサヒ「アンリ・フェッシ」は前年を上回った模様だが、ハロウィンの盛り上がりに比べると一抹の寂しさが漂う。ワインが日常化する中で、今後は季節を楽しむ商材としての提案が望まれる。

輸入通関に戻ると、チリをはじめ、上位国が軒並み数字を落とす中、伸び率だけで見ると、11位ポルトガルが44%増と大躍進。また、7位アルゼンチンも9%増。20位ギリシャが7%増と健闘した。数量はまだ少ないが、ブラジルやスロベニアも伸長し、CIF単価が2,000円超のスイスも46%の大幅増と、産地国に広がりが見られる。(続きは本紙で)