日本酒芸人「にほんしゅ」、コンビどちらも「きき酒師」資格保有、司会や漫才、セミナーなどで活躍

「にほんしゅ」あさやんさん・北井一彰さん
「にほんしゅ」あさやんさん・北井一彰さん

「にほんしゅ」はあさやんさんと北井一彰さんのお笑いコンビ。結成日は2007年10月1日。これまで呑んできた日本酒で一番印象に残っているものは「仕事終わりに飲んだ“七笑 純米酒”」(北井さん)、「同期の芸人の結婚披露宴で呑んだ日本酒(銘柄不明)」(あさやんさん)。

コンビ名は「結成前から日本酒が好きでこの名前にしたわけではない」と北井さん。「それではなぜ“にほんしゅ?”」と聞いてみると、「結成したはいいがコンビ名がなかなか決まらず、飲んでいた居酒屋で次に聞こえてきた言葉をコンビ名にする」と2人で決めたところ、ちょうど注文が入ったらしく、聞こえてきたのが「日本酒」だったそうだ。

当初は全く日本酒に詳しくなかったというが“にほんしゅ”と名乗るのなら日本酒を勉強しておこうと思ったのがきっかけとなり北井さんが“日本酒ナビゲーター”の資格を取得。その後は2人とも「きき酒師」の資格を取得するに至る。また、北井さんはさらに専門的な資格である「日本酒学講師」(日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会認定)も保有しており、セミナーなどにも呼ばれるほか、「にほんしゅ」の枠を超えて「焼酎きき酒師」の資格も持っている。

「演芸の世界ではどんどん若い才能が台頭してくる。近年では“お笑い第7世代”が良い例だが、新陳代謝がとにかく激しい。そこで“これといえば自分たち”というジャンルを確立できれば長く活躍できるのではと考え、日本酒の世界に飛び込んだのもある」とシビアな世界での生き抜き方として選んだ側面もあると話すが、「ありがたいことに日本酒業界の方は最初から受け入れてくださり、主催するイベントでは必ず呼んでくださる蔵元や団体もある」と話す。“日本酒業界を盛り上げたい”という熱意が蔵元にも伝わった結果だろう。

酒類飲料日報による取材当日は忙しいイベントの間を縫って対応してくれた。その際に出演していた「吟醸酒フェア」ではVtuberと初めて共演。心境を聞いてみると「結成時は想像もしていなかった」とのこと。「ただ、今回をきっかけに初めて日本酒を飲む方もいらっしゃると思う。そういった方を“一回きり”のお客様にせず、今後も継続して日本酒に親しんでもらえるために何ができるかを考えながら臨みたい」とあさやんさんは語る。

日本酒のイベントの司会や、日本酒にまつわる漫才を披露し場を盛り上げている姿が印象的だが、その分コロナ禍では非常に苦労したという。「飲酒もイベントも自粛ムードが強かった時期は本当に仕事がなかった。2カ月前に打ち合わせをしたイベントが1週間前に中止決定となるということも多々あった」と振り返る。しかし「我々はその気になればどうとでも生きていけるが、蔵元は出荷が滞れば文字通り存亡に関わる。未曾有の事態で先行きも不透明な中ながらも、我々を励まして、支えてくれた。その恩はしっかりと返していきたい」と北井さん。

現在の活動の他に「今後やりたいこと」を聞いてみると「伝統芸能の方とのご縁もいただけている。特に落語は“芝浜”や“長屋の花見”などお酒にまつわる演目も多く、漫才師としてできることもあるのではないかと可能性を感じている」と北井さん。そこで、大酒飲みの噺である「試し酒」の実演はどうかと聞いたところ「ちょっとご時世的に難しいかも」と苦笑いで返してくれた。

〈酒類飲料日報2023年1月20日付〉

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