常温缶から「生ビール」提供、サントリーの新業務用サーバー「ノミーゴ」テスト展開、樽導入が難しい規模でも「生ビール」販売が可能に
サントリーは10月5日、常温の缶から“生ビール”が提供できる業務用新ビールサーバー「nomiigo(ノミーゴ)」のテスト展開を開始した。缶から“生ビール”が提供できるメリットは、業務用の樽生(主な樽は10L、15L、20L)を品質保持ができる3日間で使い切ることができず、「生ビール」を扱えなかった小規模な店やカフェなどでも品質の高い「生ビール」の提供が可能となること。
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サントリーは5日に発表会を開き、取組を説明した。「nomiigo(ノミーゴ)」での取扱いは、「ザ・プレミアム・モルツ」のみに限定し、380mlの専用ジョッキ・グラスのワンサイズのみを使用するなどの条件を設ける。
缶ビールなので、1日1杯の提供でも品質を維持でき、常温なので冷蔵スペースも取らない。ファストフードやファミレス、ラーメン店などでの採用を想定しているという。サーバーには、5klのガスボンベを使用、1日10杯の注文で半年使用できる。抽出時間は、樽生は約25秒のところ、「nomiigo(ノミーゴ)」は約50秒。23年中に首都圏で100台のテスト展開を行い、改良を進めて5年後には1万台の採用をめざす。
使用する飲食店にとって、ロスの削減や作業の効率化の点でも寄与するという。サントリーによると、配管内が常に空のため、洗浄などによるビールロスを約75~120L削減し、樽取扱い作業(圧力設定、交換など)や洗浄の簡易化による年間工数は約50~70時間削減できるとしている(年間販売数量40~100樽換算)。
〈「ノミーゴ」の特徴〉
「ノミーゴ」の特徴は▽常温の缶が使用できるため、あらかじめ缶を冷やしておく必要がない(冷えた缶も使用可能)▽口あたりのよいきめ細かくクリーミーな泡と、飲食店で提供される温度(4℃程度)のビールを提供できる▽樽生ビールサーバー非設置の飲食店で使用可能▽一缶注ぎ切りのため、一杯一杯“あけたて”で提供できる▽配管内にビールが残らず洗浄時のビールロスを最小化できる▽メンテナンスが容易で作業負荷を低減――。
〈「ノミーゴ」操作方法〉
ビールを注ぐ操作方法は▽未開栓の350ml缶をサーバーにセットする▽「セット」ボタンを押してビールを抽出する▽「泡モード」ボタンを押して泡を抽出する▽「取り外し」ボタンを押して、使用済の缶を取り出す――。メンテナンス(一日の営業終了後)は▽付属している「nomiigo」専用の洗浄容器に水を入れる▽ビールを注ぐ際と同様にセットして「洗浄」ボタンで洗浄する▽その他付属品を水洗いする――。
〈お酒との向き合い方が多様化、食中心業態でもお酒の飲用意向あり〉
サントリーは5日、発表会を開催した。ビールカンパニーマーケティング本部長多田寅氏は「ライフスタイルや価値観の変化とともに、お酒に対する向き合い方も多様化が進んでいる。実際にコロナ感染拡大前に比べると、カフェやファストフード店、ファミレスなど食中心業態でお酒の飲用意向は高まっている。また、飲食店に行く機会をより貴重なものと捉え、飲むお酒にも高い品質を求める、といった動きもある。ポストコロナの飲食店支援にもつなげたい」と展開の狙いを語った。
〈「“飲食店の生ビール”のうまさ」実現〉
同本部イノベーション部伊藤優樹氏は、「国内の約4分の1の飲食店が、樽生を開栓してから使いきるまでの品質保持の観点から樽生ビールサーバー導入が難しく(樽容器は開封後3日以内での使用を推奨)、これまで“飲食店の生ビール”を提供できていなかった。“飲食店の生ビール”のうまさの秘訣は、クリーミーな泡と適正な温度にある。泡の役割はまず、ビールにフタをすることで炭酸ガスを逃さない、味・香りを逃さない、酸化を防ぐ、温度上昇を防ぐ。そして、クリーミーな泡ほど口当たりがいい。次に適正な温度だ。我々が業務店樽生取扱い40店舗を調査したところ、平均4℃だった」と語った。