お酒をよく飲む人は、2023年10月の減税でビール消費「増えた」傾向、増税の新ジャンルと変化無しの発泡酒は「減った」傾向、厳しい経済環境下で「販売価格の変動に敏感に反応」/ビール酒造組合らが動向を調査

表 酒税改正前と比較した、家庭でビール系飲料を飲む量の増減
表 酒税改正前と比較した、家庭でビール系飲料を飲む量の増減

「ビール酒造組合」と「発泡酒の税制を考える会」は9月2日、「ビール・発泡酒・新ジャンル商品の飲用動向と税金に関する調査」の調査報告書を公表した。

表 財務省資料 2026年10月にビール系飲料など税率を統一
表 財務省資料 2026年10月にビール系飲料など税率を統一

【関連記事】38歳でヱビスブランドの醸造責任者に抜擢、YBTからのインスパイアビール第1弾「燻」9月10日発売/サッポロビール有友亮太氏インタビュー

2002年から毎年実施しているもので、2024年5月2日から6日にWEB上のアンケートページで回答を得たもの。サンプル数は1,200人。調査対象は、「普段からお酒を飲んでいる20歳以上の男女」。

調査では、2023年10月に行われたビールの減税、新ジャンルの増税とそれによる発泡酒と新ジャンルの税率の統一の消費行動への影響などについて聞き取った。

前後でのビール系飲料の消費は、減税となったビールは「増えた」との回答が多く、増税となった「新ジャンル」は「減った」との回答が多かった。

これは、増税・減税の影響を分かりやすく反映している一方で、税率の変化がなく新ジャンルと税率が統一された発泡酒では「減った」割合が新ジャンルに近い結果となった。ビールへの移行も考えられるが、経済状況の厳しさや健康志向を反映して飲酒量そのものを減らす回答があった。ビールでも同様の理由での減少の回答が見られた。

経済的理由や健康志向などの減少傾向の流れの中で、“減税”のインパクトによりビールの消費が「増えた」人が減少傾向を上回ったことが分かる。

こうした調査の結果からビール酒造組合らは、「消費者はビール系飲料の販売価格の変動に対し、敏感に反応する」と分析。販売価格が高くなると、「生活防衛意識が働き、消費の停滞が懸念される」としている。

〈アンケート結果〉

以下はアンケート結果の一部を抜粋したもの。

◆家庭で飲むお酒は「ビール」61.5%で5ポイント増加

「家庭で飲むお酒の種類」は、複数回答で、「ビール」61.5%、「チューハイ・サワー」45.8%、「発泡酒・新ジャンル」39.4%となった。2023年調査と比較すると、「ビール」は5ポイント増加した。酒税改正(ビールは減税、発泡酒は税率が変わらず、新ジャンル・第3のビールは発泡酒と税率を統一)により減税となったビールを家庭で飲む割合は増加している。

表 家庭でよく飲むお酒の種類
表 家庭でよく飲むお酒の種類

◆ビールを「おいしいから」飲むのは79.4%

家庭で「ビール」を飲んでいる人に、その理由を聞くと、「おいしいから」が79.4%、「品質がよいから」23.3%、「価格が手頃だから」20.6%と続く。「おいしいから」との回答がほとんどだった。

発泡酒・新ジャンルでは、「価格が手頃だから」が63.8%と最も多く、「おいしいから」は53.7%と2番目となった。こちらあは価格面が飲用理由となっている。

表 家庭で「ビール」を飲んでいる理由・家庭で「発泡酒・新ジャンル」を飲んでいる理由
表 家庭で「ビール」を飲んでいる理由・家庭で「発泡酒・新ジャンル」を飲んでいる理由

◆酒税改正前と比較し、ビールは「増」、発泡酒と新ジャンルは「減」の回答が多い

酒税改正前と比較して、家庭でビール系飲料を飲む量の増減を聞いた。

家庭でビールを飲む量は、「変わらない」が80.2%とほとんどだが、「減った」6.2%に対して、「増えた」13.0%の方が多い。

「増えた」理由は、2023年10月に減税されたこともあり、「価格面での理由(手頃と感じる、以前より下がった)」が62.5%と突出して多い。

発泡酒では、「変わらない」69.6%、「減った」12.1%、「増えた」6.6%、「飲んでいない」11.8%となった。2023年10月に発泡酒の税率は変わらなかったが、ビールとは反対に「減った」割合が高い。

新ジャンルでは、「変わらない」75.9%、「減った」13.5%、「増えた」6.6%、「飲んでいない」4.0%だった。新ジャンルでは、2023年10月に増税となり、新ジャンルと税率が同じになった。このため、ビール、発泡酒、新ジャンルの3種類の中で最も「減った」割合が高い。

表 酒税改正前と比較した、家庭でビール系飲料を飲む量の増減
表 酒税改正前と比較した、家庭でビール系飲料を飲む量の増減

◆今後の販売価格とビール系飲料の飲酒行動の変化

「ビール350ml6缶パック」が50円程度安くなった場合、ビールを飲む量はどうなるかを聞いた。ビール飲用者は、「増える」16.8%、「減る」2.3%、「変わらない」80.9%となった。

一方、「発泡酒・新ジャンル350mlパック」が50円程度高くなった場合、発泡酒を飲む量はどうなるかを聞くと、発泡酒・新ジャンル飲用者は、「増える」5.7%、「減る」18.0%、「変わらない」76.3%となった。

発泡酒・新ジャンルのかわりにどのお酒を飲むかを聞いたところ、「ビール」が37.6%だった。一方、「他のお酒の量は増えない」との回答が17.6%となり、値上げによって他酒類への移行だけではなく、飲酒量そのものの減少につながるとしている。

◆2024飲用動向調査報告書

媒体情報

食品産業新聞

時代をリードする食品の総合紙

食品産業新聞

食品・食料に関する事件、事故が発生するたびに、消費者の食品及び食品業界に対する安心・安全への関心が高っています。また、日本の人口減少が現実のものとなる一方、食品企業や食料制度のグローバル化は急ピッチで進んでいます。さらに環境問題は食料の生産、流通、加工、消費に密接に関連していくことでしょう。食品産業新聞ではこうした日々変化する食品業界の動きや、業界が直面する問題をタイムリーに取り上げ、詳細に報道するとともに、解説、提言を行っております。

創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
主な読者:
食品メーカー、食品卸、食品量販店(スーパー、コンビニエンスストアなど)、商社、外食、行政機関など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送
購読料:
3ヵ月=本体価格12,000円+税6ヵ月=本体価格23,000円+税1年=本体価格44,000円+税