【インタビュー】農林水産省 輸出国際局輸出支援課 中岡菜々子課長補佐、食品輸出ガイドブック「おいしい日本の届け方」制作を主導

農林水産省が発行した『おいしい日本の届け方』は、誰もが食品の輸出に挑戦できるよう、世界各地の市場動向、実践者インタビュー、ノウハウを一冊に凝縮。『地球の歩き方』とのコラボレーションにより、写真や図解、マンガを交え、楽しく視覚的に学べる構成となっている。
同書について農林水産省輸出・国際局輸出支援課輸出産地形成室の中岡菜々子課長補佐(写真)は「“輸出に挑戦したい”事業者に、断片的ではなく体系的にまとまった情報を届けたかった。難解な行政文書ではなく、思わず手に取ってもらえる一冊を目指した」という。
◆初の“体系的輸出ガイド”が誕生 「現場で使える一冊」を目指して、『地球の歩き方』とコラボ
制作の背景について、「日本の農林水産物や食品に対する海外需要は年々高まっているものの、それに応えられる体制が整っている事業者はまだ限られている。特に、生産や国内出荷に日々追われる生産者にとって、輸出の必要性は感じていても、実際に踏み出す余裕がないという声が少なくなかった。海外から問い合わせがあっても、何から始めればよいかわからず、せっかくのチャンスを逃してしまったという現場の声も多く届いていた」と語る。
行政や関係機関からも多くの資料やレポートは発信されてきたが、内容は専門的かつ断片的。初心者には全体像がつかみにくく、セミナーに参加しても“流れが見えない”という声が現場からあがっていた。
食品の輸出は、国・地域・品目によって市場ニーズや規制、商流、物流が異なり、それらが複雑に絡み合うため、初めての人にはとっつきづらい。だからこそ、まずは輸出の魅力そのものを伝えながら、市場ニーズや戦略立案、輸出実務に至るまで一気通貫で理解できる一冊を形にしたい――それが本書制作の原点だった。
多様な輸出事例を俯瞰し、一つの流れとして再構成する作業は、企画段階から挑戦だった。そこで大切にしたのは、「感覚的につかめること」「生産者が思わず手に取ってみたくなること」「読みながら前向きな気持ちになれること」。どうすれば自然と現場で使ってもらえるか――試行錯誤を重ねながら制作が進められた。
制作にあたっては、東京都の『東京防災』をはじめ、数多くの冊子を比較検討。親しみやすさ、視覚的なわかりやすさ、携行性を重視し、デザイナーや輸出専門家と議論を重ね、伝えるべき情報とその見せ方を丁寧に設計した。その中で『地球の歩き方』編集部との連携が実現し、制作は加速した。
「世界市場に挑戦する方々の多くが、『地球の歩き方』に親しんできた“世界好き”な方。今回のタッグに“ぴったりだ”と共感の声が多く寄せられたのが印象的だった」と振り返る。
本書の構成は、『地球の歩き方』らしく、現地事情やトレンドをビジュアルで紹介しつつ、輸出戦略や輸出実務の基本構造を図解で整理。トラブル対応やお役立ち情報など、実務で役立つ情報も盛り込んだ。
本冊子はすでに、全国の地方農政局、政策金融公庫、JETRO、中小機構など関係機関へ配布を開始。「まさにこういうものが欲しかった」といった声が続々と届き始めている。未掲載の国・地域や、品目特化ガイドの要望も寄せられており、今後の展開にも期待が高まっている。
「この一冊が、全国の生産者や事業者の“世界への第一歩”を後押しする存在となれば嬉しい。関心のある方は、ぜひ最寄りの地方農政局へ問い合わせてほしい」と結んだ。
〈酒類飲料日報 4月25日付〉