自民党が日EU・EPA対策議員連盟を設立、政府に十分な情報提供求める
自民党は16日午後、東京・千代田区の党本部で日EU・EPA対策議員連盟を設立し、初の総会を開いた。日EU・EPA交渉の首席交渉官交渉が17日からベルギー・ブリュッセルで開かれるなど交渉が大詰めを迎えていることから、政府に十分な情報開示を求め、取り組むべき国内対策などを協議する。議連は農林議員を中心に31人の役員が名を連ね、会長には参議院議員の岡田広氏(茨城、党農業・農協研究会会長)が就任した。
具体的には▽日EU・EPAの動向把握と議連としての意思表示を図る▽随時、総会を開き、政府から情報をヒアリングし、対策を協議、実行に移す▽必要な場合は交渉を見守るべく議員を派遣する▽EU各国の関係組織との連携、国内関係組織との連携の場を設け、要求把握と意思反映を進める–などに取り組むという。ただ、日EU・EPA交渉は、TPPと違って守秘義務がないといわれているものの、その交渉段階での詳細な情報がどこまでインナー(幹部会)レベルに降りてくるかは微妙といえる。発起人代表の西川公也元農相は「EU側は(加盟国からの)マンデート(交渉権限)を得ているが、こっち(日本サイド)は我々も関係団体も交渉内容は知らされていない。政府の関係閣僚だけで進めてゆくのか、また国会等での連絡や関係団体などへ理解してもらうための努力は誰がするのか、ぜひ聞きかせてほしいものだ」と、政府をけん制する場面も見られた。
冒頭、西川氏は「内閣でEPA交渉を進めることは理解しているし、ことしは欧州各国で一連の選挙が続くため、相当EU側はこのEPA交渉を加速化させるはずだ。我々はこうした状況も理解はしている。EUから様々な要求が来ると思われるが、農林水産分野に影響が出ないよう再生産可能な対策を講じる必要があるし、(我々が)飲めるハナシか否か政府から聴取しながら議論を深めてゆきたい」と議連発足の経緯を踏まえあいさつした。
この日の総会では政府から日EU・EPA交渉の概要が説明された。外務省は17日からブリュッセルで大枠合意に向けて日EUの首席交渉官が交渉を行う予定で、27分野のうち、とくに▽物品の関税▽非関税措置▽政府調達▽サービス▽投資▽地理的表示を含む知的財産–の6分野で集中的に協議を行う予定であることを明らかにした。農水省からは、豚肉や乳製品、加工食品、木材などEUの生産状況や日EU間の貿易状況が説明され、とくに豚肉に関しては▽EUの生産量は世界の約2割、自給率は110%超▽ドイツ、スペイン、フランス、ポーランド、イタリア、デンマークの6カ国でEU全体の生産量の7割以上を占める▽生産量の約9割をEU域内で消費し、輸出仕向けは約1割程度▽日EU間は船便輸送に時間がかかるため、大部分は冷凍で輸入–などと紹介している。ただ、交渉中ということでEU側の要求など具体的な交渉内容には触れなかったことから、出席した議員からは、「EUからどのような要求が出ているのかもう少し具体的な情報を提供してもらわないと議論ができない」と、具体的な説明を求める意見が挙がった。EUが結んでいる他国とのEPA・FTAの状況や、「デンマーク企業では欧州内の労賃が安い地域で豚肉を生産している構図があると聞く」「今後、差額関税の枠内にある調製品(加工品の輸入増加)が怖い」など、影響が大きいとみられる分野に関する詳細な資料提出を求める声も挙がった。