【11月の需給展望<牛肉>】和去A5、A3は季節的に上昇も上げ幅は縮小か 和去A5は2,850円前後、A3は2,050円前後

10月の相場は、台風と長雨に見舞われたものの、切落しを中心にそこそこ動いたことで、ほぼ9月並みの相場となった。ただ、前年比では和去A3で421円安、A2で509円安と和去の下位等級で下げが鮮明になっている。また交雑B2も前年比で356円安となった。産地銘柄牛がけん引する和去A5を除き、概ね前年を大きく下回って推移している。なお、出荷頭数が極端に少なく玉不足の乳去B2は前年比・前月比とも上回った。

17年10月の東京食肉市場の規格別の価格(生体、消費税8%込み)をみると、和去A5が前月比1円安の2,813円、A4は71円安の2,341円、A3は22円高の2,026円、交雑B2は15円高の1,157円、乳去B2は53円高の1,045円となった。前述のように、前月比で大きな変動はなかった。ただ、前年比でみると和去A5、乳去B2を除き、和去A3などは大きく下げた(グラフ参照)。

11月の見通しは、現状の商いは静かで、年末に向けた手当てが本格化する20日以降に盛り上がると見込まれる。このため各等級とも30~50円の小幅な上昇にとどまる見通しで、和去A5は2,850円前後、同A3は2,050円前後、交雑B2は1,180円前後、乳去B2は1,050円前後とみられる。

なお、昨年は早めの手当てにより、11月下旬から12月上旬までは相場が上昇したものの、その後は急落した経緯があるが、今年は早めの手当てを抑え目にして、昨年急落した12月中旬の手当ても行うとの声も聞かれる。このため、昨年同様、手当てが集中するのは11月下旬から12月上旬の3週間だが、その後もある程度の手当てが入ることも想定される。なお、年始用のホルスは、年明けの安価な商材として引き合いがあるが、来年1月は本格稼働は9日以降となるため、年内の作業で物量を確保することになりそうだ。

生産面の11月見通しでは、農畜産業振興機構の予測によると、成牛の出荷頭数は2.7%減の10万1,300頭と見込まれる。ただ、と畜場の稼働日数が前年を下回るため、1日当たりの出荷頭数では2.0%減を見込む。生産量でも2.1%減の3万1,900tを見込む。品種別の出荷頭数は、和牛は2.6%減の4万6,300頭、交雑種は2.3%増の2万2,300頭、乳用種は6.3%減の3万1,200頭が見込まれる。交雑種は、酪農家での乳用種への黒毛和種交配率の上昇により増加が見込まれる一方で、乳用種の減少が続くと見ている。

輸入牛肉は同機構の予測では、チルドの10月輸入量は30.6%増の2万2,800t、11月が1.7%増の2万1,500tと予測している。9~11月の3カ月平均では前年同期を19.2%上回る2万3,000tと予測している。

10月の販売状況は、地域や量販店によってまちまちだが、首都圏の量販店では週末の台風により、遠出や外食を嫌った消費者が買いだめを行ったことで食肉の販売自体は好調だったもようだ。ただ、販売の中心はうす切り、切落しとなっている。気温が急に下がったことで鍋物として使いやすいことで動いている。また、切落しということで値ごろ感も出すが、これが仲間相場が上がらない状況につながっている。ただ、和去A5は別にして4等級以下は前年の相場を下回っており、利益的には前年の厳しさは薄れている。この傾向は11月も同様で、和牛のロイン、肩ロースのスライスが動くのは12月中旬以降とみられる。昨年の場合、12月の高値を警戒し、かたロースを11月中に手当てし冷凍在庫する動きも多かったが、11月下旬から12月上旬に極端に手当てが集中し、その後はある程度相場が下がる状況となった。結果的に、高い買い物をした経緯があることで、今年は11月下旬から和牛の手当てを行うものの、相場によっては静観し、その後手当てするとの対応も聞かれる。そのため同時期の盛り上がりはそう大きくないと見込まれる。

なお、年始には、和牛ではなく安価なホルスなどが販売されるが、来年1月はカレンダーの関係で本格稼働は9日以降となる。このため年内に仕込むことが必要であり、年内のホルスの相場が上昇することも想定される。輸入チルド牛肉では、8月、9月と米国産のチャックアイ、ショートプレートが需要を上回って輸入され、ショープレではフローズンの相場にも影響を与える状況となった。10月中旬以降は、豪州産を含めてようやく需給が締まり、11月後半からの需要期を迎えることとなる。現地のコスト高で手当てが少なかったなかで、入船遅れがあったことも背景にある。売行き自体は、決して好調ではなく、末端で動くのは国産と同様に切落しが中心。

〈畜産日報2017年11月9日付より〉