第22回世界食肉会議が米ダラスで開催、世界各国から750人以上の関係者が参加
2年に一度、世界各国から食肉に関わる経済学者や経済アナリストなど専門家が集結し、畜産業界に多大な影響を及ぼす重要課題について意見を交換し合う「第22回世界食肉会議(WMC)」が5月31日~6月1日まで、米国テキサス州・ダラスで開かれた。
国産食肉事務局(IMS)と米国食肉輸出連合会(USMEF)が共催し、米国内から750人以上が参加した。95年以来の米国での開催とあって、日本の食肉関係企業十数社がスポンサーを務めたほか、約60人もの日本の業界関係者が会議に参加した。
今回は「貿易を信じる」をテーマに、▽食品の国際政治▽世界的な貿易システムの展望▽変化する世界:食肉貿易への影響要因▽食肉のサプライチェーンに関する最先端の情報▽社会規範と業界への影響▽業界の主な課題▽未来の消費者に備えて――などについて、世界各国の行政、国際機関、主要団体の専門家が講演し、とくに自由貿易の重要性と保護主義への対応、世界人口の増加に対する食肉供給の在り方、代替肉など新たに出現した商品への業界の対応などを中心にさまざまな観点から意見が交わされた。
開会式でホスト役を務めたUSMEFのフィリップ・セング名誉会長は、「今回の会議のテーマには『貿易を信じる』ことを掲げている。貿易は米国のみならず世界各国の業界にとって非常に重要なテーマだ。前回の会議は16年11月にウルグアイで開催され、そのころ米国の新しい代表者(ドナルド・トランプ大統領)が選ばれた。彼は、従来の考え方に疑問を投げかけ、貿易に関してさまざまなことを主張している。我々は貿易が大切であり、よい良い世界をつくる原動力であると考えている」と強調。その上で「いま貿易をめぐりさまざまな課題があり、それぞれの課題についてこの会議で取り上げたい。まずは台頭する保護主義があり、この保護主義に対してどのように対処すべきか、この会議で取り上げてゆく。また、ルールに基づいた貿易体制についても議論する。WTOが世界の貿易体制を代表する存在だが、WTO体制に対して疑問を持つ国や、とくに大きな市場を持つ国でルールを無視する国もある。科学技術も非常に重要なテーマであり、今は誰もがスマホを持ちたがるが、食物に関してはむしろ18世紀に逆戻りし、ナチュラルな食物を食べたいと思う人が増えている。ただ、世界90億人の人口をいかに食べさせるかということも考えなければならない。さらに代替肉など従来になかった食物も台頭している。環境や持続可能性、アニマルウェルフェアなどもテーマであり、将来型の消費者がどうなるのかということも取り上げたい。このように非常に示唆に富む会議といえる。我々は協力するために競争し合っており、競争のために協力している。協力関係を密にすることは非常に重要である」と述べた。
IMS ギョーム・ルエ会長
IMSのギョーム・ルエ会長は「私の方から2つの考えを紹介する。ひとつは、いま食肉の代替商品が流通し始めていること。それを支持する勢力があり、今後の食肉に代わると主張する人がいる。だが、私はそうは思わず、代替肉は今後なくなることはないだろうが、本物の食肉に比べると小さな存在にとどまると思う。偽物の食肉商品も出回っており、それを監視しなければならない。2つ目は、コミュニケーションが大きな課題となっている。業界の状況をより良くするためには連携が不可欠。食肉生産をより改善するため、環境やアニマルウェルフェアに配慮することに注力している。世界の多くの人々に食料を供給するための鍵を我々が握っている。今でも十分に食料に恵まれない人々が世界中にいる。この人たちも食肉を欲しており、食肉を供給してゆく我々の仕事に誇りを持つべきだ」と呼びかけた。
〈畜産日報 2018年6月6日付より〉
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