〈安心と安全を進化させるオランダポーク〉アメリカに次ぐ世界第2位の農産物輸出国
2018年度の豚肉輸入量が前年度比5.5%増となる92万5,631tと4年連続で前年度を上回り、過去最高を更新した。米国、カナダのほか、EU、南米など多くの国々から豚肉を輸入しており、そのなかの1つにオランダがある。オランダの国土面積は九州とほぼ同じ大きさで、そのうち約44%に当たる184万ha が農用地となっている。国土はライン川下流の低湿地帯に位置し、国土の4分の1が海面より低い干拓地で平坦な地形が広がる。国土を有効に活用し、花卉や野菜などを生産、さらに畜産を中心に小さな経営面積でも高い収益をあげることのできる農業を振興して、農産物を他国へ輸出している。オランダ中央統計局(CBS)の発表によると、オランダの15年の農産物輸出総額は史上最高の813億ユーロを記録し、米国に次いで世界第2位の農産物輸出国となっている。
オランダでは農業全体がサスティナビリティ(持続可能な環境に配慮した生産)を重要なテーマとしている。養豚分野においても安全性確保とともに環境への配慮やアニマルウェルフェア(家畜福祉)への取組みを一段と強化しており、安心で安全なオランダ産ポークを日本の食卓に届けている。今後は日EU・EPAの発効によって、調製品などで関税面のメリットが出ることが見込まれている。本紙はオランダ現地の生産農場からと畜工場、加工工場、小売店店頭まで、オランダの養豚事業における一連の取り組みを取材する機会を得た。現在のオランダポークにおける取り組みをお伝えしていく。
〈オランダ最大の食肉関連企業VION FOOD GROUP〉
オランダでは同国最大の食肉関連企業・VION FOOD GROUP本社を訪問した。日本担当のエリック・ディヨンコマーシャルディレクターに話を聞くことができた。
VION社は豚肉、牛肉、フードサービスの3つの事業を行っており、昨年の売上げは約51億ユーロ(約6,630億円)、約1万2,000人の従業員が働く。世界の食品企業のなかでトップ100に入る規模を持ち、オランダ・ドイツに25の生産工場を有する。1週間当たりの豚のと畜頭数は約31万頭、牛は約1万8,000頭、フードサービスでは年間に6万1,000tの食材を取り扱う。
豚肉事業ではオランダ・ドイツに15の生産工場を持ち、従業員数は約8,100人。1年間で172万tを販売しており、売上金額は約34億ユーロ(同約4,420億円)に上る。生産からと畜・販売まで一貫した管理体制を持ち、長期契約をしている信頼できる養豚農家から豚を仕入れ、と畜工場で処理、加工工場で加工した後、自社の配送トラックで顧客先に納品するシステムを取っている。オランダ国内には、本社があるBoxtel(ボックステル)、Apeldoorn(アペルドーン)、Scherpenzeel(スカペンジール)など7カ所に豚肉関連の工場があり、スカペンジール工場が日本向けの生産量が1番多い工場となっている。同社の地域別の売上げではオランダやドイツといったEU向けが大部分を占めるが、日本をはじめとするアジア向けの売上げが伸びており、日本では「風車豚」ブランドの豚肉をフードサービス向けに展開している。
日本では「風車豚」ブランドを展開
ディヨン氏の説明によると、近年EUでは大企業に対して、環境問題など社会的責任を求められることが多くなっている。このことから同社ではCSRに関して、「食品安全(従業員に対する安全も含む)」「アニマルウェルフェア(家畜福祉)」「トレサビリティ」をテーマに掲げている。ほかの2テーマはもちろんだが、とくにEUでは「アニマルウェルフェア」は非常に重要視される傾向にあるという。ディヨン氏はVION社が見学やインターネットなどを通じ、豚肉、牛肉がどのように生産され、製品となるか「世界で1番オープンにしている会社だと自負している」と強調する。
〈畜産日報 2018年7月25日付より〉