〈シリーズ工場訪問〉大阪府・鳥治食品 鶏肉加工に強み、スライサー・手切りで様々なカットに対応
鶏肉小売店として1960年に創業した鳥治食品(株)(大阪府豊中市、内本基嗣社長)は、全国から鶏肉を仕入れてカットする鶏肉加工品の生産販売、鶏肉の卸売り事業のほか、鶏肉小売店や業務スーパーの運営を行っている。
近年、人手不足などを背景に、売上高の大半を占める鶏肉加工品に対する需要が高まっており、同社の取扱量も年々増加傾向にある。業容拡大に伴い、来年秋に本社機能・流通センターを併設した新工場を豊中市に建設して移転する。山口忠彦営業部部長に創業からの経緯、会社の強みなどについて話を聞いた。
鳥治食品・山口忠彦営業部部長
――創業からの経緯について
鶏肉の小売りから始まり、スーパーのテナント、単独の鶏の専門店として関西で店舗を広げてきた。約50年前から鶏肉の卸売り事業を開始し、その中で顧客から鶏肉カット品の要望をいただくようになり、鶏肉加工品の製造・販売に取り組んできた。
当初は、大阪市淀川区の十三工場(現:大阪プロセスセンター)で鶏肉のカット、加熱加工、タンブリングを行っていたが、近隣に住宅が増えたこともあり、2002年に豊中工場(大阪府豊中市)に本社と工場を移転。豊中工場の生産キャパがいっぱいとなり11年に増築をした。それを機に品質管理部を置き、安心・安全を前面に押し出した工場改革を行った。
機械化を進め、肉の質量を赤外線で測り、設定した重さにカット可能で大量生産もできるオートポーションカッター、こま切れ肉用にマルチスライサーなどを導入。マルチスライサーは0.5cm~3cm の刃があり、1cmダイスなどの小さなカットから大きなカットまで、あらゆるサイズに対応可能となっている。このほか、むね肉の開きなどの開きカットが可能な水平スライサーも導入しており、機械でのカットが難しい作業は職人による手切りで対応している。また、鶏肉の解凍には高周波の解凍機を、冷凍にはトンネルフリーザーを、最終包装には自動計量機、自動真空機を導入している。
冷凍にはトンネルフリーザーを導入
――主な代表商品と会社の強みについて
鶏肉のこま切れ、ポーションカット、角切りなどが主に展開している商品となっている。原料肉は全国の生産者から地鶏・銘柄鶏の鶏肉を仕入れている。また、鮮度にもこだわっており、中四国地方の生産者から直接仕入れた鶏肉は、処理された翌日には店頭に並んでいる。
当社の強みは鶏肉をいろんなサイズにカットができることで、SMや外食店の人手不足を背景にカット品の需要が増えており、ニッチと言われる部分で全国制覇を目指したいと考えている。このほか、家庭用の加工品としてSMやドラッグストアなどで、冷凍品の鶏つみれや「焼鳥のたれ」をそろえる「かしわ屋さん」シリーズ、急速冷凍した「若鶏もも肉角切り」「若鶏ささみ筋切り」をそろえる「旨(うま)コッコー」シリーズを展開している。とくにもも、ささみをバラ凍結した「旨コッコー」シリーズは必要な分だけ解凍できる手軽さもあり、好調に推移している。
――新たな取組みと今後の展開について
現在、豊中工場は生産キャパがいっぱいとなっており、大阪府豊中市に来年、新工場を建設して移転する。工場の大きさや最大の生産能力は、現在の豊中工場のほぼ倍となる。新工場では機械化をより進め、導入機械数を増やす。また、バラ凍結の需要が非常に伸びていることからトンネルフリーザーも1機新たに設置する。人手不足のなか、下味付きの商品も伸びており、大量生産可能な工場にしていく考えだ。
新工場は今の豊中工場から車で約5分の場所に立地しており、「社員とパートさんが一番大事」という社長の考えのもと、現在の雇用を継続しながら来年秋以降の稼働を見込んでいる。配送機能も兼ね備えており、「安全・安心を超える工場にしたい」をコンセプトに、品質管理についても細部までルール決めして取り組んでいる。また、9月から新たな販売管理システムを導入して、工場や事務所もシステム化することでペーパーレスを進めている。昔ながらの取り組みを続けていては時代遅れになってしまう。良いものを取り入れて、一歩先を行く会社になっていきたい。
このほか、独自の販売先を開拓するため、展示会などに積極的に出展して、ニーズに合った商品作りや直接販売につなげている。現在の注力エリアは、未開拓の名古屋、東京を考えている。今後も直接販売ルートの構築に注力していく考えで、東京にはいずれ営業所を作りたいと考えている。
〈畜産日報 2018年10月15日付より〉