TPP11の対応、輸入牛肉はネットワーク最大限に活かす/日本ハム・畑佳秀代表取締役社長インタビュー(下)
日本ハム畑佳秀代表取締役社長のインタビュー。最後の今号ではTPP11や日EU・EPAへの対応を聞いた。そのなかで、畑社長は「輸入食肉の扱い量が多く、このネットワークを最大限に活かしていく」と述べた。国産については、鶏肉は川上をしっかり増羽するとともに、豚肉では品質の高いブランド豚肉を展開していくとの考えを示した。
〈前回の記事〉マーケティング推進部を設けフラットに、意思決定迅速に/日本ハム・畑佳秀代表取締役社長インタビュー(中)
――TPP11、日EU・EPAへの対応はいかがですか
先ごろ米国とのTAG(物品貿易協定)も出てきているが、現状の考え方としては、我々の原料である食肉の調達力について、輸入食肉の扱い量が多いこともあり、このネットワークを最大限に活かしていけると思う。我々の扱う国内の食肉の出回り割合は(数量ベース)は、国産45%、輸入物は55%程度、(国内出回り全体での同社の)シェアは20%前後であり、このネットワークを最大限生かすことが大事になる。欧州、米国もさまざまな取引先があり、その連携を強化していくことで、強みを発揮できる。
一方で、ハム・ソーセージなどは価格優位性のある物が入ってくる。ハム、ベーコン、生ハムなどだが、価格競争が激しくなる。ここは国内の生産力を高めていくことが必要になる。さらにそうした優位性のある物をしっかり取扱っていく。
食肉では、牛・豚・鶏があるなかで、我々はファーム事業を行っている。鶏の事業は、輸送期間を含め賞味期限が短く、関税もそう高くないため、大きな影響は受けないと考えられる。ここはしっかりと川上のところを増羽しながら、取引先と連携を強化したい。(株)アクシーズと資本業務提携したが、調達力をさらに高めたい。
問題は豚になる。ここはどうなるかは分からないが、国産志向が強いのは事実。我々の良質で品質の高いブランド豚肉を展開していけば戦えると思う。今の設備を最大限に有効活用しながらしっかりやっていきたい。牛は、国産と輸入とで市場が違う。そのなかで当社は輸入ビーフの扱いが多く、優位性は高いと考えている。
中計2020の経営方針の1つに海外市場展開のギアチェンジがある。いま、連結業績に占める海外事業売上高は11%。グループブランドの約束である「おいしさの感動と健康の喜びを世界の人々と分ちあいたい」とのメッセージを具現化する意味で、今後も成長分野として拡大していく。海外事業は、豪州、ウルグアイの牛肉事業。タイの鶏肉加工食品、ベトナムのハム・ソーセージ、マレーシアの鶏、さらにトルコでの養鶏、米国の鶏加工品などひとつの加工食品事業としてくくることができる。これをエリアを超えて展開したい。日本向けは、海外事業本部の売上の半分を占め、現地向けが半分となる。日本向けも国内のシェア拡大へさらに拡販する。TPP、TAGの問題は、海外事業本部としても一つのミッションであり、拠点間の連携でも、ネットワークをさらに強固にしていく。香港のディストリビューターに資本参加したが、同社は中国の南にも展開しており、グループの商品を流通させていく付加価値物流として考えている。
――最後に社歴で思い出深いことは
1981年に入社した。85年に静岡日本ハム(株)を設立し、そのなかでハムソーの業務システムを導入した。経理の部分に携わり2カ月ほど泊り込んだことは、忘れられない思い出になる。その後、システム導入でひと通り全工場を回った。入社後、最初の3カ月は工場実習があり、その際にはシンスライスなどの製造に携わった。その後、シャウエッセンが販売されるなど、成長期を側面から見てきたことになる。
今年度、陣頭指揮することになったが、中計2020をやり切ること、今の事業構造、ビジネスモデルを将来に向けてどうしていくか、この中計の間も議論する必要がある。新たなステージ、新たな食べ方、新たなカテゴリーをしっかり構築していき、社会・環境面を配慮しながら持続可能な社会に貢献し、選ばれる企業になりたい。2月以降、小売を中心にお得意先様を訪問してきた。状況が変化するなかで、どれだけスピーディに対応できるかがキーポイントになると感じている。ニーズを的確にとらえ、スピード感を持って対応していきたい。
[畑佳秀(はた よしひで)代表取締役社長 略歴]1958年5月生まれ、60歳、1981年3月香川大学経済学部卒、同年4月日本ハム入社、2009年4月執行役員経理財務部長、11年4月同・情報企画部担当、同年6月取締役執行役員経理財務部長・情報企画部担当、12年4月取締役常務執行役員グループ経営本部長、経理財務部・IT戦略部担当、15年4月代表取締役副社長執行役員コーポレート本部長、18年1月から現職。
〈畜産日報 2018年10月19日付より〉